対メキシコ関税に米議会や産業界が反発、撤回を求める動き

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2019年06月03日

メキシコからの不法移民流入に対する対抗策としてホワイトハウスが5月30日に発表した、メキシコからの輸入全品目に対する関税賦課措置(2019年5月31日記事参照)に対して、米国の産業界や連邦の有力議員から政党を問わず反対の姿勢が表明され、関税賦課の撤回を求める動きが広がっている。

上院で通商分野を扱う財政委員会のチャック・グラスリー委員長(共和党、アイオワ州)は「通商政策と国境の安全保障は別問題だ」とし、対メキシコ追加関税は「関税に関する大統領権限の悪用で、議会の意図に反している」と述べ、追加関税に反対の立場を表明した。また、「追加関税はUSMCAの批准を危うくする」との認識を示し、「別の手段を検討するよう大統領に要請する」と述べている。また、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)は声明を発表し、「トランプ大統領の追加関税による脅しは賢明な通商政策に基づくものではなく、大統領の誤った移民政策によるもの」と指摘し、「大統領による国境に混乱をもたらしている問題がさらに増える」と批判した。

全米商工会議所のニール・ブラッドリー副会頭兼最高政策責任者は「メキシコ製品への追加関税賦課は明らかに間違った動きだ」とする声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。さらに追加関税に関して、法的に問題がないかノンストップで調査をしており、追加関税を回避するために「利用可能なあらゆる手段を検討している」と述べた。同商工会議所はウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで2018年のメキシコから州別の輸入額データも紹介し、5%の関税が賦課された場合には約173億ドル、25%では約868億ドルの関税負担が生じるとしている。州別では特にテキサス州、ミシガン州、カリフォルニア州などへの影響が大きい。

米国最大規模の製造業の業界団体である全米製造業者協会(NAM)のジェイ・ティモンズ会長は、通商政策と移民問題を組み合わせることは危険で、追加関税措置は「米国の製造業および消費者に壊滅的な影響をもたらす」との見解外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを示した。また、トランプ政権に対して米国勤労者世帯に与える影響を注意深く考察し、関税措置の再考を求めていく考えを示した。

通商関連の民間団体、全米外国貿易協議会のルーファス・エルサ会長は、追加関税賦課は「メキシコと米国の両国を傷つける、危険で不安定化を招く動き」で、「米国の労働者、消費者、輸出者に甚大な影響を及ぼす」と警鐘外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを鳴らした。さらに、「国境を越えるサプライチェーンに大きく依存している自動車業界が最大の被害者になる」「(貿易摩擦により)他国への市場アクセスが低下している米国の農畜産家は、新たに最大の輸出先であるメキシコからの報復関税の脅威に直面する」と危機感を表明した。

(須貝智也)

(米国、メキシコ)

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