EU首脳、3会派連立が前提と今後のEU運営方針示す

(EU)

ブリュッセル発

2019年05月29日

ブリュッセルで5月28日、欧州議会選挙後初の非公式欧州理事会(EU首脳会議)が開催された。EU首脳は選挙結果を総括し、次期・EU諸機関トップ人事などについて協議したとみられる。なお同日、これに先立ち、欧州議会・最大会派の中道右派、欧州人民党(EPP)グループは同グループに属する首脳陣を集めた会合を開催し、マンフレート・ウェーバー議員(ドイツ選出)の欧州委員会委員長就任を目指して支持する方針を固めた(2019年5月29日記事参照)。

ブレグジットは反EUプロパガンダに対するワクチン

非公式欧州理事会閉会後、記者会見に臨んだ欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長は、25年間で最高となった欧州議会選挙での投票率(2019年5月28日記事参照)に、参加した首脳らが非常に満足したと述べた。

また、トゥスク常任議長は、EU懐疑派や極右の大幅躍進が予想された中、多くの大陸欧州諸国で親EU勢力が獲得議席を伸ばしたことについてについて、「英国のEU離脱(ブレグジット)問題が要因の1つだ。EU市民はEU離脱が意味する現実を悟り、おのずと結論を出した。ブレグジットは、反EUプロパガンダや偽情報(フェイク・ニュース)に対するワクチンになっている」と持論を展開した。さらに今回の選挙で、EU懐疑派政党が反EU主義のスローガンを捨てて、途中からEUの改革者を標榜(ひょうぼう)したことを挙げ、今回の選挙で市民がより親EU的になったとし、「欧州は今回の選挙の勝者だ」と強調した。

次期EU機構人事に関する欧州理事会としての意向を6月中に決定

他方、今後のEU機構運営については「(欧州議会での)多数派を形成するためには少なくとも3つの会派連立が求められ、これまでよりも複雑な議会運営を迫られる」「多様な立場、各国の利害を反映する必要が出てくる」と、率直な現状認識を明らかにした。

また、次期・欧州委員会委員長人事については「欧州理事会の提案に基づき、欧州議会が選出する」との原則を欧州理事会であらためて確認し、この結果、次期・欧州委員長候補者はEU理事会、欧州議会双方の過半数の支持を得る必要があるとの認識を示した。このほか、EU首脳の間で、欧州委員長候補者についてEUの多様性を反映し、「出身国の分布や規模」「所属政党(グループ)」「性別」などの視点でバランスを考慮することの必要性を議論したと述べた。

トゥスク議長は、今後、欧州委員長のほか、(自身の後継者となる)欧州理事会常任議長、欧州中央銀行総裁、外務・安全保障上級代表などの人事などについても、EU首脳との協議を急ぎ、6月中をめどに決定する方針としている。

(前田篤穂)

(EU)

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