欧州議会選挙、過去20年間で最高の投票率

(EU)

ブリュッセル発

2019年05月28日

欧州議会は5月27日、今回の欧州議会選挙の投票率が50%を突破〔同日午後2時26分(中央ヨーロッパ時間)時点の暫定値は50.94%〕、過去20年間で最高を記録したと発表した。直接選挙による欧州議会選挙が初めて実施された1979年の投票率は61.99%だったが、その後は一貫して低下し、前回(2014年)は42.61%まで下がった。欧州議会は今回、「史上初めての投票率上昇」となったことも紹介している。

東欧諸国を中心に投票率は大幅改善

EU加盟国の国政選挙と比較した場合、欧州議会選挙の投票率が相対的に低くなる現象については、欧州政治の専門家が「2次的(セカンド・オーダー)選挙仮説」の見地から説明を試みている。有権者の生活や行動に直接影響を及ぼす国政選挙は、政権選択を行う意味も含む「1次的(ファースト・オーダー)選挙」であるのに対し、欧州議会選挙はこうした当事者意識を持つことが難しい「2次的選挙」とEU市民に認識されているという論点だ。欧州議会が扱う法案や議案には、専門的で難解なものが多く、専門家でもない限り理解が難しく、関心の薄いものも少なくない。

こうした中、EU加盟28カ国中、21カ国で投票率が上昇した。今回の選挙に対するEU市民の関心の高さをうかがわせる。一部には、「強制投票制度」(2019年5月24日記事参照)を採用して8割を超える投票率を維持してきた国(ベルギー、ルクセンブルク)もあるが、前回は半数に相当する14カ国で40%を下回る投票率を記録した。

しかし、今回、ポーランド(21.9ポイント増)、スペイン(20.5ポイント増)、ルーマニア(18.6ポイント増)、ハンガリー(14.4ポイント増)など、前回から投票率が大幅に上昇した国が目立つ。特に東欧では、ブルガリアを除く全ての国で上回った。前回の投票率が2割を割り込んだチェコ(10.5ポイント増)、スロバキア(9.7ポイント増)でも相当の改善が見られた。

今回の選挙結果(2019年5月27日記事参照)は、これまで多数派を形成した中道2大会派に対する不満を色濃く投影したものだが、EUの権限拡大を求める穏健リベラル派や環境政党の大躍進も無視できない。こうした動きがEU懐疑派や極右派の躍進を小幅にとどめる結果(2019年5月27日記事参照)につながったと考えることもできる。

産業界や市民に投票参加を呼び掛けた(2019年5月27日記事参照)欧州商工会議所(EUROCHAMBRES)のクリストフ・ライトル会頭は5月27日、今回の投票率上昇を評価、今後の新たなEU政局の展開に期待感を示す声明を出している。

(前田篤穂)

(EU)

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