親EU派、欧州議会選挙での増勢背景にEU政局に関心示す

(EU)

ブリュッセル発

2019年05月27日

今回の欧州議会選挙(2019年5月24日記事参照)では、中道右派の欧州人民党(EPP)グループと、中道左派の社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループの2大会派が過半数を割り込む見通しで、親EUで穏健リベラル派の欧州自由民主同盟+ルネサンス(ALDE+R)グループの躍進が注目される(2019年5月27日記事参照)。ALDE+Rグループの党勢拡大の背景には、フランスのマクロン大統領率いる政権与党の共和国前進が同グループに加わったこともあるが、フランスや英国、ドイツなどのほか、これまで同グループが出遅れていた中・東欧での新たな議席の獲得が貢献。欧州議会が4月18日付で発表した選挙結果予測を上回る勢力拡大を実現した。

ALDEグループ躍進の背景に、ポピュリズム台頭への危機感

ALDEグループ躍進の背景には、EUに対する予想外に根強い支持と、EU懐疑派や極右派の台頭に対する警戒感があったと考えられる。欧州議会が今回の選挙直前(4月)に公表した「2019年春季・ユーロバロメーター調査報告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」(EU市民を対象とする世論調査)の結果によると、「EU加盟の是非」に対する回答は、「良いこと」が全体の61%を占め、47%だった2011年から徐々に改善傾向にある。逆に、「悪いこと」との回答は10%(2011年は18%)まで落ち込んでいた。同様の傾向は「EU加盟国であることのメリット」についての設問でも見られ、「メリットあり」との回答は2011年調査の53%から68%に上昇、「メリットなし」は2011年調査の37%から23%に低減していた。この設問に対する回答を国別に見ると、「メリットなし」が3割を超えているのはイタリア(49%)、ギリシャ(36%)、キプロス(36%)、オーストリア(34%)、チェコ(31%)の5カ国にとどまる。英国とフランスも30%だが、これらを含めて28カ国中、イタリアを除く27カ国で回答の過半数を「メリットあり」が占めている。

なお、欧州流通企業の産業団体ユーロコマースのクリスチャン・フェルシューレン事務局長は5月16日、オランダ・アムステルダムで開催された「世界リテール事業者会議」の講演で、今後の5年間に新たなEU機構が直面する課題として、「欧州内外の保護主義台頭」を挙げた。同事務局長は、こうした動きの背景には各国での大衆迎合主義的政治家(ポピュリスト)の勢力拡大があると述べた。また、「ポピュリストの主張は単純で分かりやすいが、複雑な問題に対して誤った対応に導く」「彼らが代弁しているという大衆の生活を危険にさらす」と指摘。欧州におけるポピュリズム台頭に強い危機感を示している。

(前田篤穂)

(EU)

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