対英国、EUとの通商交渉開始に向けた手続き進む

(米国、EU、英国)

米州課

2019年01月31日

米国通商代表部(USTR)は1月29日、英国との通商交渉に関する公聴会を開催外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。公聴会では、米国・英国ビジネス評議会、米国労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)、全米生乳生産者連盟(NMPF)、米国乳製品輸出協会(USDEC)、ソフトウエア情報産業協会(SIIA)などの業界から20人以上が証言した。通商専門誌「インサイドUSトレード」(1月29日)によれば、英国との通商協定は米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づくべきとの見解を複数の証言者が示した。

懸念される英国・EU関係については、英国がEUとの関係を決定するまで通商交渉の範囲は不確実だとの認識を多くの証言者が示したものの、同時に、高い水準の新たな通商協定のモデルを作り出すことができるだろうとの楽観的な見方も示された。他方、米国・英国ビジネス評議会などを含む少数の証言者は、「合意なき離脱(hard Brexit、ノー・ディール)」は米国企業にとって重大な混乱を招く可能性がある、と主張した。

USTRは2018年10月16日に、英国との通商交渉開始の意思を議会に通知しており、英国がEUを離脱する3月29日以降に交渉を開始するとしていた(2018年10月17日記事参照)。

EUとの交渉目的は、両者で意見が分かれる

USTRは、英国との通商交渉開始の意思を議会に通知した同じ日に、EUとの交渉開始についても議会通知をしており(注1)、1月11日にEUとの交渉目的を公開PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。交渉目的には、物品貿易、原産地規則などのほか、サービス貿易、デジタル貿易、投資、政府調達、衛生植物検疫措置(SPS)など24項目が挙げられた。

物品貿易では、工業製品に加えて農産品においても「関税の撤廃または削減により、EUでの米国農産品の包括的なマーケットアクセスを確保する」と明記された。他方、欧州委員会が1月18日に採択した交渉指令案は、「工業品に対する関税撤廃」と「非関税障壁撤廃に向けた(基準認証の)適合性評価」を主な内容としており、農業分野は含まれない(2019年1月21日記事参照)。上院財政委員会のチャック・グラスリー委員長(共和党、アイオワ州)は、委員長就任直前の1月9日、農産品が通商交渉の範囲に含まれない場合は上院での審議を通過できないとの見解を示す一方で、欧州委のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)は、農産品に関する通商交渉はできないとの立場を変えておらず、両者の言い分は対立している(「インサイドUSトレード」1月10日)。

EU側が適用除外を求めている、商務省が現在調査中の1962年通商拡大法232条に基づく自動車・同部品への追加関税に関しては、特段記載されなかった(注2)。

(注1)USTRは、英国、EUのほか、日本との交渉開始についても同日に議会通知をしている。日本との交渉目的については、2018年1月25日記事を参照。

(注2)調査概要は2018年5月25日記事参照。

(赤平大寿)

(米国、EU、英国)

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