日EU・EPAに署名、「保護主義に対抗のメッセージ」

(EU、日本)

ブリュッセル発

2018年07月18日

欧州委員会は7月17日、日EU首脳協議(2018年7月10日記事参照)のため訪日している、欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長と欧州委のジャン=クロード・ユンケル委員長が日本の安倍晋三首相と共に「日EU経済連携協定(EPA)」に署名したと発表した。

欧州は農業分野の経済効果に期待

欧州委によれば、日EU・EPAは6億人を超える巨大市場をカバーし、EUとして交渉妥結した中では最大の通商協定になるという。トゥスク常任議長は同EPAについて「法に基づく国際秩序に懐疑的な動きが散見される時代の中、EUと日本は共にこうした保護主義に対抗するという明確なメッセージを発信する重要な意義がある」と語った。また、セシリア・マルムストロム委員(通商担当)は「通関手続きを簡素化し、多大な関税を撤廃・削減、非関税障壁も軽減するEPAの効果は明白で、企業の輸出とビジネス拡大の機会を創出することになる。特にEUの農業分野は巨大な日本市場へのアクセスと200を超える地理的表示(GI)産品に対する保護という恩恵を受ける」とした。

また、欧州委は「ゴーダ(オランダ)、チェダー(英国)などのチーズ(現行関税率:29.8%)の多くやワイン(平均関税率:15%)についての関税撤廃・削減」「牛肉の輸出拡大や豚肉の関税削減」「200品目を超える質の高いEU産品に対するGIの日本市場での保護」などを例示して日本への市場参入に期待感を示した。

農業分野以外でも、「日本の48中核都市での公共調達にEU企業の参入が担保されたこと」や「日本の主要な鉄道分野の調達における参入障壁低減」をEPAの効果とし、金融、電子商取引、情報通信、運輸などのサービス市場に期待感を示した。他方、EU側にとってセンシティブな分野である自動車分野については、7年という長期の関税削減期間が設けられている。

今後、EPAは欧州議会と日本の国会での承認を経て発効するが、2019年早期の発効に期待感(2018年7月11日記事参照)を示している。なお、今回署名したEPAからは分離された「投資紛争解決手続き」(2017年12月11日記事参照)などの投資保護条項については交渉を続けるとしている。次回交渉は今秋の予定。

なお、日本の外務省は同日付で、日EU・EPAの和文テキスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公開した。

(前田篤穂)

(EU、日本)

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