301条に基づく対中関税賦課の留保を撤回
(米国、中国)
ニューヨーク発
2018年05月30日
トランプ政権は5月29日、1974年通商法301条(以下、301条)に基づく対中関税賦課の最終的な対象品目リストを6月15日に公表し、その後速やかに25%の関税を賦課すると発表した。
最終対象品目リストを6月15日に公表
米通商代表部(USTR)は4月3日、対中輸入額500億ドル相当の約1,300品目(8桁のHTSコードベース)の対象品目リストを公表し、公聴会を含むパブリックコメントを実施していた(注1)。6月15日に公表される予定の対象品目リストは、これらパブリックコメントの結果を反映し、米国政府が実際に対中関税を課す品目を示すものになる。
なお、米国の関税賦課への対抗措置(注2)を中国政府が発表したことを受け、トランプ大統領は別途4月5日に、上述の500億ドルに上乗せして1,000億ドル相当の対中輸入に関税を課すことを検討するようUSTRに指示している。この追加措置の対象品目リストはいまだ発表されておらず、今回の関税賦課の対象には含まれない。
中国企業の対米投資規制強化案は6月30日に発表
米国政府はまた、中国企業の対米投資規制および米国の重要な産業技術の買収に関わった中国系企業による米国からの輸出規制の強化策を6月30日に公表し、これら措置についても速やかに実施すると発表している。トランプ大統領は、301条の対中制裁措置の発動に際して、中国企業の対米投資の規制強化策を提案するようスティーブ・ムニューシン財務長官に命じている(2018年3月23日記事参照)。この期日は既に過ぎているが、同案が大統領に提出されたかどうかは公表されておらず、内容も依然不明となっている。
議会では、外国企業の対米投資案件を安全保障の観点から審査する外国投資委員会(CFIUS)の権限強化に関する法案「2017年外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」の審議が行われている。同法案には、米国技術の海外流出を防ぐ条項も一部含まれている。トランプ政権はFIRRMAを支持しているが、議会での法案審議が滞った場合は、独自に対中投資規制の強化に乗り出す姿勢を示している(注3)。
米国政府はこのほか、301条の調査結果に基づいて行ったWTOへの提訴も継続すると発表した。
中国政府との協議は継続
トランプ政権は5月19日、中国政府との間で米国の対中貿易赤字削減に向けた枠組みで合意したとの共同声明を発表し、ムニューシン財務長官は中国に対する関税賦課を留保する考えを示していた(2018年5月22日記事参照)。
米国政府は「中国政府との協議は継続する」としているが、今回の発表により、この関税賦課の留保は撤回された。ワシントンの通商弁護士は今回の発表について、「中国での2国間交渉を有利に進めることが狙い」と分析している。ウィルバー・ロス商務長官は6月2~4日に中国を訪問し、5月19日の合意事項に関する具体案を議論することになっている。
(注1)対象品目リストの詳細は2018年4月6日記事参照。公聴会の内容については5月24日記事と5月25日記事参照。
(注2)中国政府は米国政府による関税賦課への対抗措置として、約500億ドル相当の対米輸入に対する関税賦課の案(2018年4月5日記事参照)を発表している。
(注3)CFIUSとFIRRMAの概要については2018年5月24日地域・分析レポート参照。
(鈴木敦)
(米国、中国)
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