自動車はじめ4業界は対中関税に懸念-301条公聴会-

(米国)

ニューヨーク発

2018年05月25日

米通商代表部(USTR)が開催した、1974年通商法301条(以下、301条)に基づく対中関税に関する公聴会(2018年5月24日記事参照)において、自動車、小売り、製薬、化学の関連団体・企業は対中関税賦課に反対の姿勢を示した。対中関税賦課は最終的な製品価格の上昇につながり、消費者の不利益および米国企業の国際競争力の低下を招くと批判した。

2,000社以上の自動車産業に従事する製造業や販売企業が加盟している自動車ケア協会(ACA)は、対中関税の対象に多くの自動車関連製品・部品が含まれているため、米国内の自動車サプライチェーンに大きな影響を与えるとの懸念を表明した。1,000社以上の自動車関連製品のサプライヤーが加盟する米国自動車部品工業会(MEMA)は、100以上の自動車関連製品の除外を求めた。

小売り、製薬、化学関連団体も

世界最大規模の小売業界団体である全米小売業協会(NRF)は、テレビやモニターなどのコンシューマー製品が対中関税賦課の対象に含まれていることに強い懸念を表明した。家電小売り大手のベストバイは、薄型カラーテレビは中国並みの大規模な組み立てラインは米国になく、中国でのみ生産可能と述べ、対象から除外するよう要望した。

製薬関連団体は、サプライヤーの変更には米国食品医薬品局(FDA)の承認が必要なこと、また承認を得るまでに莫大なコストと時間を要することを挙げ、対中関税が課された場合には中長期にわたって影響を受けるとの懸念を表明した。

化学・農業関連団体は、中国の報復関税に多数の化学製品や大豆など農作物が含まれていることに強い懸念を表明し、関税賦課以外の手段で中国との交渉を進めるよう要望した。米国化学協議会(ACC)は、中国の報復関税は50億ドル相当の化学製品およびプラスチック製品の対中輸出に影響を与えるとの試算結果を示した。特に50億ドルのうち60%を占めるプラスチック製品への影響が甚大で、米国経済にも深刻な影響を及ぼすと述べた。

中国以外での代替品調達は困難

そのほか、「代替品を米国内または中国以外の国から調達することは可能か」との委員からの質問に対し、多くの企業が「米国内で製造されていないため国内調達は不可能で、中国が最大のサプライヤーだ。中国と同等のコストかつ大量の生産能力を保有するサプライヤーを、中国以外で探すのは非常に困難」と述べ、自社関連製品を対中関税賦課の対象から除外するよう求めた。

対象品目拡大を求める声も

ただし、中国に知的財産権を侵害されていると主張するものの、現在公表されている追加関税賦課リストに該当する品目が含まれていない団体や企業からは、新たな品目の追加を求める声も聞かれた。北米タイル評議会は、中国産タイルは米国製品をコピーし知的財産を侵害していること、ダンピングが疑われるほどの安価な価格で輸入されていることなどを理由に、セラミック製のフロアタイルおよびモザイクタイルを追加するよう要望した。

また、米最大手ソーラーパネルメーカーのソーラーワールドアメリカスは、中国は米国から盗んだソーラー技術を利用して米国市場に参入していると批判し、米国のソーラー産業を守るためにも、太陽光電池および太陽光電池モジュールを追加関税の対象に含めるべきと主張した。

(須貝智也)

(米国)

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