特集:外国人材と働く青森県で進む外国人材の活用(サービス業)

2019年5月22日

労働力不足が深刻化する中で、青森県内の企業はどのように外国人材を活用しているのか。連載後編では、観光産業や介護福祉などのサービス分野における活用事例を紹介する。

インターン受け入れをきっかけに、外国人社員を採用

弘前市に近い大鰐町で青森ワイナリーホテルを経営する津軽開発は、従業員約100人で、標高550メートルの山頂にあるゴルフ場やスキー場に隣接する宿泊施設の運営や、外食事業などを展開している。同社は2018年8月から3カ月間、ジェトロが経済産業省から受託した「国際化促進インターンシップ事業」を通じて、弘前大学大学院に留学中のマレーシア人学生をインターンとして受け入れた。

青森県を訪れる外国人は2011年以降、台湾、中国、韓国などのアジアを中心として増加しており、こうした状況に対応するため、ホテルでは館内の英語表示や英文ウェブサイト開設などの検討を進めていた。そこで、インターンには、(1)館内表示とウェブサイト、自社製品パンフの英語への翻訳業務、(2)外国人観光客への県内旅行プランの提案などを主に担当してもらうことにした。


青森ワイナリーホテルの外観(津軽開発提供)

インターンの受け入れを担当した工藤純子氏は「受け入れは、当初考えていたほど負担にはなりませんでした」と述べ、予定していた英語表示や翻訳業務だけでなく、海外の人や在日外国人留学生などが青森県を旅行で訪れた際の日程案(冬旅)についても、インターンを主体に企画し提案してもらった、とした。さらに、「外国人が引かれる場所や食べ物など、私たちが普段気付かないことを彼女から多く学ぶことができた。外国人観光客への接し方についても、他のホテルスタッフの意識改革にもつながり、今後役立つと思う」と、同プログラムの成果を評価した。インターンからも、「『おもてなし』の精神や、日本企業での『報・連・相』の必要性がよく理解できた、インバウンドにおける青森の魅力も学ぶことができて収穫だった」との感想が寄せられ、双方にとって有意義だったと振り返った。

これを契機として、同社は日本語の堪能な韓国人社員1人をフロントスタッフとして採用した。工藤氏は「この社員はホテルでの仕事は初めてだが、9カ月間のフロント業務の経験を通じて、今ではお客さまに柔軟に対応できるようになった。他のスタッフとコミュニケーションを図りながら学習しており、積極性がある。外国人だけではなく日本人も含めたお客さまへの応対にも磨きがかかり、貴重な戦力になっている」と、外国人材への期待を語った。

外国人職員が職場と社宅の両方で技能実習生を手厚くサポート

介護分野でも、外国人材の活用が注目されている。青森県高齢福祉保健課によると、県内の介護人材は2025年度に約3,650人不足することが見込まれる。また、介護人材の離職率が14%と上昇しており、介護に従事する職員の確保・定着率は以前より深刻になっている。

医療・介護施設の運営や在宅介護サービスを提供する社会福祉法人恵生会は、従業員約100人で、2018年から県内の介護福祉施設としては初めて、外国人技能実習生(インドネシア人4人)の受け入れを開始した。


恵生会が運営する介護施設の外観(恵生会提供)

実習生は、本国で日本語能力試験(JLPT)N4レベルを取得した後、静岡市内にある監理団体の施設で約2カ月間の研修を経て、2018年11月から恵生会での実習を開始した。2019年にはJLPTのN3レベルを取得したため、介護施設などで通算最長5年間の就労が可能となった。さらに、4月から在留資格「特定技能」が創設され、3年以上日本で就労することで介護福祉士の国家試験を受験することもできる。この資格を取得すれば家族(配偶者・子)の帯同も可能となり、在留期間更新の回数制限もなくなる見通しだ。

恵生会の工藤恵一理事は外国人材を採用したきっかけについて、「東日本大震災により人材確保が極めて困難になった」ことを挙げた。さらに、「高齢化と人口減少により働き手不足が加速しており、今後10年で外国人の受け入れはさらに進む。介護施設間の激しい競争や淘汰(とうた)も生じるだろう」と語る。

恵生会の介護施設での外国人実習生の業務内容は、日本人のいわゆる介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)と同様で、外国人として特別な役割を担っているわけではない。外国人実習生の最年少は20歳で、吸収力が高く、短期間で日本人と同じように作業がこなせるようになる。施設利用者とのコミュニケーションも、若者ならではの明るさと元気があり、ムードメーカーとしても心強い存在、と高く評価されている。


恵生会の工藤理事(中央後方)、マネジャー
(前列の一番右)と実習生たち(ジェトロ撮影)

外国人材の活用で成功している理由は、地元在住のインドネシア人が同じ施設のマネジャーとして勤務しており、職場と社宅の両方で実習生のケアをしていることが挙げられる。社宅は、廃校になった県立高校の教員用宿舎を購入して改装。1階にマネジャー世帯が居住し、2階を実習生がシェアしている。さらに、職場の日本人統括者が過去の教職経験を生かし、実習生の日本語学習を毎日2~3時間サポートしている。実習生4人全員が来日後、JLPTのN3レベルを取得できたのは、仕事だけではなく私生活に至るまで親身にサポートしているところが大きいだろう。

工藤理事は、「介護福祉施設の周辺地域では、人口の高齢化が進んでいる。多くの外国人材に来てもらうことで、介護福祉士不足を補うだけではなく、これからは地域の活性化にもつなげたい」と抱負を語った。

外国人材は地域の活性化にも効果的

外国人材を活用する企業は、特にサービス分野において、自社の利益のみならず、地域の活性化も見据えながら、中長期的な視点をもって事業を展開しているようだ。外国人旅行者に短期的に滞在してもらうだけではなく、外国人材に地域に定着してもらうことで、さらなる地域経済活性化の効果が期待できる。外国人材の受け入れは、地域経済の活性化を図る上で、今後さらに重要な取り組みとなるだろう。

執筆者紹介
 ジェトロ青森 所長
 木村 慶一(きむら けいいち)
1993年、ジェトロ入構。インド、米国(ニューヨーク、アトランタ)駐在などを経て、2018年1月より現職。青森県産品の輸出支援を行っているほか、県5カ年計画(基本計画)、国際戦略等の外部審議員も務めている。

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