株式会社NTQジャパン
ベトナムのICT企業NTQ Solutionが、2017年8月、システム開発事業を手掛ける日本の株式会社エイ・シー・ティーとの共同開発でPCセキュリティ製品「iLUTon(イルトオン)」を完成させた。同社は、2016年2月に日本法人株式会社NTQジャパンを設立。現在、横浜で、日本企業向けの製品開発の顧客サポートを行っている。顧客企業から業務を受託する従来のオフショア開発から一歩進め、共同開発を行う新たな日越パートナーシップモデルを提示したNTQに日本での事業について聞いた。
ベトナム・ハノイに本拠地を持つ受託IT開発のベンチャー企業であるNTQ Solution(以下、NTQ)は、2017年8月、日本の株式会社エイ・シー・ティー(以下、A.C.T.)との共同開発でPCセキュリティ製品「iLUTon(イルトオン)」を完成させた。
iLUTonは、ユーザーに意識させることなくPCのログイン・ログオフを自動で行うPCセキュリティシステムだ。受信機となる装置をPCに接続して、自身が専用のカードを付帯しておくだけで、席を離れると、自動でPCがログオフされる。席に戻ってくると、今度は自動でログインされる。面倒なパスワード入力を抜きに、組織における情報セキュリティを向上させる。日本での許認可を経て、2018年中には販売を開始する予定だ。
日本企業との共同開発により完成したPCセキュリティ製品iLUTon
日越企業の新たなパートナーシップモデル
NTQは、ICT先端技術の実用展開を行うため、ハノイ本社に4名程度で構成されるR&Dチームを持っており、AI、IoT、Robotics、e-learning、画像認識の技術実用化にも積極的に取り組んでいる。R&Dチームの取り組みを通し、NTQの技術力の高さをPRすることができると同社の営業推進部 課長 チュン・ダオ・クゥイ・ズゥン氏(以下、ズゥン氏)は言う。「これまで年に数回、日本出張をするだけで、積極的な営業をやってきませんでしたが、R&Dチームは私たちが何をできるかを顧客に提示できます。実際にR&Dチームの取り組みを見て、私たちへの発注を決めた顧客もいます。」とズゥン氏。
iLUTonもまさにこのR&Dチームの取り組みがきっかけだった。NTQに2回アプリ制作を発注し、同社の技術力を高く評価していたA.C.T.は、2017年3月にNTQを訪問した。その際、R&Dチームで開発中のPCセキュリティ装置(当時は接触型のシステムであった)を見て、共同開発を決定した。その後、A.C.T.が、本製品の日本市場への投入のため、非接触型への変更を提案するなど、仕様を考案。NTQがシステム開発、製品設計を行い、形にした。
日本企業が業務の一部をベトナム企業にアウトソースするビジネスは一般的になってきているが、今回のように、対等な立場でシステムの共同開発まで行う連携は、日越の新たなパートナーシップモデルとして特筆すべき事例だ。
顧客対応のため、日本市場へ
NTQは、ハノイで起業して今年で7年目のベンチャー企業だが、設立当初5名だったメンバーは現在約230名に増えるなど急速に拡大している。日本での事業が拡大するにつれ、カスタマーサポートの必要性を感じ、日本進出を決定した。
「私たちは、経営上自らの市場を”ジャパン・マーケット”と”ノン・ジャパン・マーケット”に区別しています。それぐらい日本は私たちにとって重要な国です。実際、私たちの売り上げの9割が日本におけるものです。」と同社代表取締役社長のファン・タイ・ソン氏(以下、ソン氏)は言う。「設立当初は、発注に対し対応するだけで事足りましたが、顧客が増え、よりタイムリーな対応、フェイストゥフェイスの対応を求められるようになりました」とズゥン氏。国をまたぐ契約や取引には、様々なリスクもあり、同社にとって最も重要な市場である日本における顧客の要望に応えるため、2016年2月に日本法人、株式会社NTQジャパン(以下、NTQジャパン)を東京都内に設立した。
NTQジャパンが入居する横浜ワールドビジネスサポートセンターが設置されている横浜ワールドポーターズ
同社が日本市場を重要視する理由について、「日本人の気質はベトナム人ととても相性が良い。社員が5名だった時代から、日本の顧客が多く、社内には日本の文化が浸透しています。日本での生活も非常に馴染みやすい。もちろんそれだけでなく、ビジネスの観点からも、日本市場にはチャンスが多いです。慢性的なIT技術者の不足で、ソフトやシステムの開発をアウトソースしたい企業が多いためです。西欧諸国に比べ、信用されるまで時間がかかりますが、そこから長い付き合いができ、リターンが大きいのも日本の特徴と考えています」と、ソン氏は語った。
同社は、現在本社を横浜市の横浜ワールドビジネスサポートセンター(以下、WBC)に移し、この場所を中心にエンジニアら17名が勤務している。
自治体インセンティブとジェトロのサポート
横浜を選んだ理由について聞くと、「東京近郊で物件を探していたとき、ちょうどジェトロ横浜からWBCの紹介がありました」とズン氏は答えた。NTQジャパン代表取締役の小川義輝氏も「ジェトロは顔が広く、横浜市など自治体だけでなく、業界・企業などとのコネクションづくりでお世話になっている」と続ける。顧客の多くが横浜に拠点を持ち、オンサイトで業務にあたる社員が集まりやすいこと、都心へのアクセスの良さ、入居費用の安さなどを考慮し、WBCへの入居を決定した。
また、ジェトロのサポートについて、「日本法人設置後も、源泉徴収やVISA取得の手続きなど細かな質問に対して、都度対応をしていただき大変助かっている」と小川氏。特にVISAに関しては、日本に駐在する従業員の家族構成等によって手配すべき書類が変わるため、前例に倣うことができず苦労したという。
NTQの強みと今後の展望
NTQジャパンで働く17名のうち、10名以上が顧客企業の社内で勤務するオンサイトメンバーとして、オフショア開発業務に携わっている。同社の強みについて尋ねると、「顧客企業の目線に立ち、『顧客と私たち』という二者ではなく『One-team』を意識して業務を行っていること。そのために、語学・技術・マナーのバランスのとれた人材雇用に力を入れています。また、新しいことに挑戦し続けるR&Dチームが社内にいることも強みのひとつです」とズゥン氏は語った。同社はこうした「顧客の立場に立って考え、納期を遵守し、仕様変更へ柔軟な対応をする」という日本的な企業文化を実践し、日本企業の信頼をつかむとともに、既存顧客からの紹介で着実に顧客を増加させてきた。
今後の展望について、ソン氏は「今はまだオフショア開発事業がメインですが、いずれはiLUTonのような共同開発事業の比重を増やすべく、日本法人にもR&Dチームを創設したい。日本法人を本社から独立した企業にさせることが第一の目標」と述べた。iLUTonについても、まずは日本市場でしっかりと定着させることが肝要としながらも、将来的には、世界展開も考えているという。実現すれば、日越企業の共同製品が世界へ展開される好例となる。
ベトナムIT企業のネクストステップ
日越企業の新たなパートナーシップモデルを提示したNTQ。同社は同じWBCに入居するベトナムIT企業に自社の経験を活かしたアドバイスもしているという。今後、こうした新たな形で、日本企業と提携し、革新的な技術を世にもたらすベトナム企業の誕生が期待される。
NTQ Solution 代表取締役社長ファン・タイ・ソン氏(写真左)及び営業推進部 課長 チュン・ダオ・クゥイ・ズゥン氏(写真右)
(2018年1月取材)
同社沿革
- 2011年
-
ベトナム、ハノイにて、NTQ Solution JSC設立
- 2016年
-
東京都に日本法人株式会社NTQジャパンを設立
- 2017年
-
横浜市のワールドビジネスサポートセンターに入居
8月に株式会社エイ・シー・ティとの共同開発でPCセキュリティ製品「iLUTon」を完成
株式会社NTQジャパン
- 設立
-
2016年
- 事業概要
-
ソフトウェア開発、ITサービス等(POC/ R&Dの初期開発段階支援含む)
- 親会社
-
NTQ Solution JSC
- 住所
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(本社)〒231-0017 神奈川県横浜市中区新港2-2-1 横浜ワールドポーターズ 6F
- URL
ジェトロの支援
- 物件探し
- 自治体インセンティブ情報の提供
- VISA取得にかかる情報の提供
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