イエレン財務長官、1月19日にも債務上限に達するとの見通し示し、議会に対応促す

(米国)

ニューヨーク発

2023年01月16日

ジャネット・イエレン米国財務長官は1月13日、連邦議会上院のチャック・シューマー多数党院内総務(民主、ニューヨーク州)や下院のケビン・マッカーシー議長(共和、カリフォルニア州)ら上下院の両党リーダー4人に書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを送り、1月19日にも連邦政府債務が現状の法定上限である31兆4,000億ドルに達するという見通しを明らかにした。2022年10月3日に債務残高が31兆ドルを超えたことが発表されてから(2022年10月7日記事参照)、約2カ月半で法定上限に達する見込みとなった。

2021年12月16日に議会で債務上限が31兆4,000億ドルに設定された際、2023年初めごろまでの連邦政府の資金需要に対応できるとされており(2021年12月16日記事参照)、ほぼ見通しどおりの結果となった。書簡によれば、財務省は今後、公務員退職・障害者基金などの償還や新規投資の停止などを通じてして資金を捻出するとしており、「6月上旬までに現金および臨時資金が枯渇する可能性は低い」と予想しつつも、「かなりの不確実性を伴う」ともしており、債務上限の引き上げまたは一時停止を迅速に行うよう議会に求めた。

上記の手元資金が枯渇し、米国債が発行できなくなれば、米国債は債務不履行(デフォルト)に陥ることになる。これまで米国債がデフォルトに陥ったことはないが、オバマ政権下の2011年8月には、議会で債務上限引き上げに合意できたものの、デフォルト発生リスクを踏まえた民間格付け会社が米国債の格下げを発表し、金融市場を中心に世界経済が大きく混乱した。このような悪影響を回避するためには議会での早期対応が重要となるが、現在下院は財政規律に厳しい共和党が多数派を握っていることに加え、共和党もマッカーシー議長の選出に15回の投票を要するなど(2023年1月10日記事参照)、一枚岩とはいえず、与野党間の執行部で合意したとしても議決に至ることができるかは不透明だ。水面下では、共和党の穏健派が民主党と債務上限問題について協議を始めているともされるが(「ウォールストリート・ジャーナル」紙1月11日)、財務省の手元資金枯渇までに、債務上限を議会で引き上げることができるか注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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