欧州委、EUの2022年のGDP成長率予測を3.3%に上方修正、2023年は0.3%に下方修正
(EU、ユーロ圏)
ブリュッセル発
2022年11月18日
欧州委員会は11月11日、秋季経済予測を発表した。2022年のEU27カ国の実質GDP成長率を3.3%と予測し、7月の夏季経済予測(中間予測)(2022年7月15日記事参照)と前回の包括的な予測である5月の春季経済予測(2022年5月18日記事参照)から、0.6ポイント上方修正した(添付資料表1参照)。2021年と2022年前半の力強い成長により、EU経済は前回予測を上回るとした。一方で、2023年の実質GDP成長率は、欧州のエネルギー危機が家計の購買力を低下させ、生産を圧迫するため、7月の予測から1.2ポイント下方修正し0.3%とした。ユーロ圏19カ国の実質GDP成長率については、2022年は3.2%、2023年は0.3%と見通す(添付資料表2参照)。
欧州委によれば、新型コロナウイルス関連の規制措置後の経済活動の再開を受けて、サービス業を中心に消費が活発化した結果、2022年上半期(1~6月)のEUの実質GDP成長率は予測を上回った。第3四半期(7~9月)にも経済成長は続いたものの、そのペースは減速した。一方で、不確実性が高まる中、エネルギー価格上昇圧力や、家計の購買力の低下、外部環境の悪化、金融引き締めにより、EUおよびユーロ圏、そしてほとんどのEU加盟国が第4四半期(10~12月)に景気後退に転じるとした。2023年第1四半期(1~3月)もインフレ圧力が継続し、家計の可処分所得を縮めるため、経済活動の縮小が続くが、同年春にはインフレ圧力が徐々に緩和され、経済成長が回復すると予測。しかし、強力な逆風が依然として需要を抑え、経済活動は低迷し、2023年のGDP成長率はEU、ユーロ圏ともに0.3%にとどまると見込む。その後、徐々に成長を取り戻し、2024年はEUで1.6%、ユーロ圏で1.5%まで回復するとした。
今回の予測によると、2022年通年のEU加盟国のGDP成長率は、エストニア(マイナス0.1%)を除く全加盟国でプラス成長となるが、ばらつきもみられる(添付資料表2参照)。主要国をみると、前回の包括的な予測である春季予測からイタリア、スペインがそれぞれ1.4ポイント、0.5ポイント上方修正され、ドイツは据え置き、フランスは0.5ポイントの下方修正になる。
2022年初からの10カ月でインフレ率〔消費者物価指数(CPI)上昇率〕が予測を上回り、物価上昇圧力が拡大してピークが年末に移動した結果、2022年のEUとユーロ圏のインフレ率はそれぞれ9.3%、8.5%と見込む。インフレ率は2023年には低下するものの、高い水準を維持し、EUとユーロ圏でそれぞれ7.0%、6.1%となった後に、2024年にはそれぞれ3.0%、2.6%に落ち着くと見通す。
欧州委は、厳しい環境にもかかわらず、労働市場は力強く拡大し続けており、過去数十年において、EUの2022年の雇用率は過去最高、失業率は過去最低となるとした。2022年9月のEUの平均失業率は記録開始以来最低の6.0%だった。2022年通年の失業率は、EU平均で6.2%、ユーロ圏平均で6.8%と予測した(添付資料表3参照)。
厳しいガス市況と2023~2024年冬のガス供給不足が大きなリスク要因
欧州委は、ロシアによるウクライナ侵攻が続き、さらなる経済的混乱の可能性があるため、経済の見通しは例外的なレベルでの不確実性に直面していることを強調した。最大の脅威として、輸入に依存するEUのガス市場の状況、特に2023~2024年冬のガスの供給不足を挙げた。ガス供給以外にも、地政学的緊張から生じるほかの商品市場に及ぶ衝撃の直接的・間接的な影響や、長期化するインフレ圧力、世界の金融市場での金利上昇に対応するために無秩序な調整が行われる可能性も重要なリスク要因として挙げた。
(大中登紀子)
(EU、ユーロ圏)
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