欧州委、EUとユーロ圏の2022年のGDP成長率予測をともに2.7%へ大幅に下方修正

(EU、ユーロ圏)

ブリュッセル発

2022年05月18日

欧州委員会は5月16日、春季経済予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。EU27カ国とユーロ圏19カ国の2022年の実質GDP成長率をともに2.7%と予測し、同じくともに4.0%とした2月の冬季経済予測(中間予測)(2022年2月16日記事参照)からそれぞれ1.3ポイント下方修正した。前回の包括的な予測である2021年11月の秋季経済予測(2021年11月15日記事参照)からはEUとユーロ圏ともに1.6ポイントの大幅な下方修正となる。2023年はEU、ユーロ圏ともに2.3%と予測し、秋季予測からEUは0.2ポイント、ユーロ圏は0.1ポイント下方修正した(添付資料表1、2参照)。新型コロナウイルス感染拡大による経済的影響から回復した直後のEU経済は、持続的かつ堅調な拡大が見込まれていたものの、ロシアによるウクライナ侵攻に伴い、物価にさらなる上昇圧力が加わり、サプライチェーンの混乱にも拍車がかかり、不確実性を高めた。

欧州委は、EUのGDP成長率は、新型コロナウイルス関連の規制措置後の経済活動の再開とコロナ禍の成長支援政策の複合効果により、2023年までプラス成長を維持するという。新型コロナ後の人的接触を伴う各種サービスの再開や、堅調で改善しつつある労働市場、エネルギー価格高騰の影響を相殺するための財政措置などが、個人消費を支える見込み。投資は、EU復興基金の中核予算である「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」の完全な執行と、それに伴う各加盟国の国内改革に後押しされると見込む。

今回の予測によると、2022年のEU加盟国のGDP成長率は全加盟国でプラス成長となるが、ユーロ圏の主要国を含むほとんどの加盟国で秋季予測から下方修正された。ドイツは秋季予測から3.0ポイントと大幅な下方修正になった。ポルトガルとアイルランドのみ、それぞれ0.5ポイント、0.3ポイント上方修正された。

2022年の失業率について欧州委は、EU平均で6.7%(秋季予測と同じ)、ユーロ圏平均で7.3%(同0.2ポイント改善)と予測した(添付資料表3参照)。欧州委は、2021年後半に大きく改善したことを受け、労働市場の状況は引き続き改善していくと見通す。ウクライナからの流入者の労働市場への参入は穏やかに進むと見込まれ、目に見える変化が表れるのは2023年以降になると見通す。

インフレ圧力は年初から勢いを増しており、2022年のユーロ圏のインフレ率〔消費者物価指数(CPI)上昇率〕は、第2四半期に6.9%でピークを迎え、その後徐々に低下し、通年では6.1%と予測した。秋季予測の2.2%から大幅な上方修正となった。

エネルギー価格高騰が最大の下振れリスク、不確実性も高く

欧州委は、最大の下振れリスクはエネルギー価格の高騰とし、ロシアによるウクライナ侵攻に起因するサプライチェーンの不確実性が、エネルギーだけでなく食料、基礎的な商品やサービスのさらなる価格高騰を招く可能性を指摘した。また、中国の一部で継続されている新型コロナウイルスの感染拡大防止措置は、国際貿易に混乱を招き、生産を圧迫しているとし、新型コロナも依然としてリスク要因として挙げた。

欧州委は、経済成長とインフレ率の予測は、ロシアのウクライナ侵攻の行方とそのエネルギー市場への影響に大きく左右されるとして、エネルギー価格がさらに上昇し、ロシアからのガス供給が完全に停止した場合は、EUのGDP成長率は2022年に約2.5ポイント、2023年には約1ポイントそれぞれベースライン予測を下回り、インフレ率は2022年に3ポイント、2023年は1ポイント以上、ベースライン予測を上回る可能性を指摘した。また、これらの直接的なリスク以外にも、EUとロシアの経済的な断絶の効果を現段階で十分に見通すことは困難とし、不透明性を強調した。

(大中登紀子)

(EU、ユーロ圏)

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