欧州委、2022年のEUとユーロ圏のGDP成長率予測をともに4.0%に下方修正
(EU、ユーロ圏)
ブリュッセル発
2022年02月16日
欧州委員会は2月10日、冬季経済予測(中間予測、注)を発表した。EU27カ国の2022年の実質GDP成長率を4.0%と予測し、前回の秋季経済予測(2021年11月15日記事参照)の4.3%から0.3ポイント下方修正した(添付資料表1参照)。一方で、2023年の実質GDP成長率は2.8%とし、前回の2.5%から0.3ポイント上方修正した。ユーロ圏19カ国についても、2022年の実質GDP成長率は前回の4.3%から0.3ポイント下方修正して4.0%とし、2023年は2.7%と前回の2.4%から0.3ポイント上方修正した。
欧州委は、多くの加盟国は、感染者の増加や予防的な隔離、介護に起因する人手不足や医療制度への負担などの新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けながらも、成長を継続しているとした。半導体や一部の金属製品の不足を含む、物流と供給面でのボトルネックは、少なくとも2022年上半期を通じて生産に影響を及ぼし続けると見通す。さらに、エネルギー価格は、前回の経済予測の想定よりも長く高水準を維持することが見込まれ、インフレ圧力を高めているとした。
一方で、欧州委は、現在の新型コロナウイルス感染拡大に起因する経済的な緊張は短期的なものとみている。継続的な労働市場の改善や、高い家計貯蓄率、依然として良好な資金調達環境、そしてEU復興基金の「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」の完全な執行を背景に、経済活動は再び活性化し、供給状況は正常化に向かい、インフレへの圧力も緩和されると見通している。
今回の予測によると、2022年はほとんどのEU加盟国で3.0%以上のプラス成長となるが、依然としてばらつきもみられる。ユーロ圏の主要国では、前回予測からスペインが0.1ポイント上方修正となった。一方で、ドイツは1.0ポイント、フランスとイタリアはそれぞれ0.2ポイント下方修正された。
欧州委は、エネルギー価格の高騰に加え、2021年の秋以降から他の商品に対するインフレ圧力が高まったことを背景に、2022年のEU27カ国のインフレ率〔消費者物価指数(CPI)上昇率〕の予測値を3.9%とし、前回予測の2.5%から大幅に上方修正した(添付資料表2参照)。2023年には物価上昇は緩やかになるとし、1.9%と予測した。
依然として不確実性とリスクは高く、新たに地政学的緊張も加わる
欧州委は、今後の下振れリスクとして、現在進行中の感染拡大防止措置と長引く人手不足が経済活動の足を引っ張る可能性がある、と指摘した。重要なサプライチェーンの機能低下は予想以上に長引いているものの、短期的な需要の縮小は、供給のボトルネックの解消を若干早める可能性があるとした。さらに、成長とインフレ見通しに対するリスクは、東欧における地政学的緊張によって著しく悪化していると指摘した。
上振れ要因として、2020年、2021年と同様に、経済活動の再開を受けて個人消費が予想以上に強く伸びる可能性があるとした。また、RRFが経済活動を一層後押しすると見込んでいる。
(注)欧州委は、春と秋にGDPの各構成要素や失業率、財政収支のGDP比などを含む包括的な経済予測を発表し、夏と冬に、実質GDP成長率と消費者物価指数上昇率に関する中間予測を発表する。
(大中登紀子)
(EU、ユーロ圏)
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