欧州委、2023年GDP成長率予測を大幅に下方修正、インフレは2022年7~9月期がピーク
(EU)
ブリュッセル発
2022年07月15日
欧州委員会は7月14日、夏季経済予測(中間予測)を発表した。EU27カ国とユーロ圏19カ国の2022年の実質GDP成長率をそれぞれ2.7%、2.6%と予測し、前回の5月の春季経済予測(2022年5月18日記事参照)からほぼ据え置いた。これに対し、2023年の成長率予測では、EUは1.5%(前回予測2.3%)、ユーロ圏は1.4%(同2.3%)と、わずか2カ月前の予測値から1ポイント近く大幅に下方修正した(添付資料表1参照)。
欧州委は、前回の春季予測の際に下振れリスクとして挙げた主要な要素が具現化していると評した。具体的には、ロシアのウクライナ侵攻に起因するエネルギーとコモディティー価格の高騰や、米国の金融引き締めによる経済の減速、厳しいロックダウンを伴う中国の新型コロナウイルス政策の影響などを挙げた。2022年に関しては、第1四半期(1~3月)のGDP成長率がEUで0.7%と好調だったことが寄与したが、年後半はこうした要因が響き、成長の上積みは期待できない上、影響は2023年に波及すると見ている。
2022年インフレ率、中・東欧とバルト3国で2桁の見込み
2022年のインフレ率〔消費者物価指数(CPI)上昇率〕はEUで8.3%(前回予測6.8%)、ユーロ圏で7.6%(同6.1%)と、いずれも前回予測を1.5ポイント上回る高い予測値となった。中でもバルト3国では、リトアニアとエストニアが17.0%、ラトビアが15.5%といずれも15%を上回り、中・東欧諸国も、チェコ(13.9%)、ポーランド(12.2%)など2桁に達している(添付資料表2参照)。欧州委のパオロ・ジェンティローニ委員(経済担当)はこれら地域の高いインフレ率を認識しつつも、2023年には加盟国間の差異は収束に向かうとの見方を示した。
EUでは、ロシア産天然ガスの供給停止や、今後のガス調達に伴う不確実性からガス価格が高騰。6月のガス卸売価格は1年前の6倍となる1メガワット時(MWh)当たり140ユーロを超え、直近の7月12日には同173ユーロに達し、ガスとそれに連動する電力価格の上昇は深刻な状況だ。他方、高騰していたアルミニウムや銅といった金属価格が足元では需要の減少を反映して下落に転じていることや、石油や一部の食料・コモディティー価格は2023年にかけて落ち着きをみせる見通しであることなど、明るい要素にも言及があった。欧州委は、インフレ率は2022年第3四半期(7~9月)にピークを迎えた後、着実に下落し、2023年第4四半期(10~12月)には3%を切る水準まで落ち着くと見込む。経済成長とインフレはともに、引き続きロシアによるウクライナ侵攻の行方が重大なリスク要因だとし、ジェンティローニ委員はガス供給の混乱がスタグフレーション的状態を増幅させ景気悪化が続く「深刻なシナリオ」にも備えなければならないと警戒した。
(安田啓)
(EU)
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