3歳以下の乳幼児養育の費用、新たに個人所得税の控除対象に
(中国)
北京発
2022年04月06日
中国国務院は3月28日、「3歳以下の乳幼児の養育について個人所得税の特別付加控除を設ける通知」を発表した。同通知によると、3歳以下の乳幼児の養育に関する支出について、1人につき毎月1,000元(約1万9,000円、1元=約19円)を課税所得から控除するとした。控除方式については、夫婦どちらかの所得から控除額全額を控除するか、双方の所得から半分ずつ控除するかを選択できる。同通知による措置は2022年1月1日にさかのぼって適用される。
中国共産党中央委員会と国務院が2021年7月に発表した「出産政策の最適化による人口の均衡ある長期的発展の促進に関する決定」は、3歳以下の乳幼児の養育に関する支出について、個人所得税からの控除を検討することを提起しており(2021年7月29日記事参照)、3月5日に李克強首相が発表した2022年の政府活動報告でも言及していた。
財政部と国家税務総局の責任者は、今回の政策が出産政策の最適化に向けた関連支援措置の一環であり、子育てコストの軽減につながると指摘したほか、現行の6項目の特別付加控除(注)に今回の乳幼児の養育に関する控除を加えて7項目とすることで、乳幼児の養育から、高齢者扶養までライフステージの各段階で発生する負担に応じた控除を適用することを考慮したとコメントした。
中国財政学会業績効果管理専門委員会の張依群副主任委員は、乳幼児の養育に関する支出を特別付加控除の対象にすることは出産の奨励や高齢化の進展に向けた有効な取り組みであり、減税・費用削減政策の効果の拡大や特別付加控除制度の改善にもつながると指摘し、積極的な財政政策を通じた出生率の向上や経済の活性化の促進に向けた重要な取り組みとの見方を示した(「証券日報」3月28日)。
中国政府は3人目の出産を容認するなど出産制限を緩和し少子高齢化への対応を進めている(2021年6月8日記事参照)。一方で、国家統計局の発表によると、2021年の出生数は1,062万人で、2017年以降5年連続で減少している(2022年2月2日記事参照)。今後も、具体的な関連支援策の策定動向とその効果が注目される。
(注)中国では個人所得税法の改正に伴い、2019年1月1日から特別付加控除制度が新たに導入され、子女教育費、住宅ローン利息、住宅家賃、社会人の継続学習費用、高額医療支出、高齢者扶養支出の6項目について控除できるようになった(項目ごとに控除限度額などの制限あり、2018年10月29日記事参照)。
(張敏)
(中国)
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