EU、対ロシア制裁第3弾を採択、中銀への追加制裁や航空機の発着禁止
(EU、ロシア、ウクライナ)
ブリュッセル発
2022年03月02日
EU理事会(閣僚理事会)は2月28日、ロシアによるウクライナへの軍事行動に対する新たな制裁パッケージ(プレスリリース)を採択した。23日の第1弾(2022年2月24日記事参照)、25日の第2弾(2022年2月28日記事参照)に続く第3弾。
今回の制裁では、EU域内の資産凍結や、資金提供などの禁止、域内への入域禁止の対象にこれまでのロシア政府・軍関係者に加えて、ロシアのウラジミール・プーチン大統領に近いとされる石油や金融関連の新興財閥(オリガルヒ)など26人と1団体を新たに追加した。これにより、制裁対象は合計で680人と53団体となった。
また、ロシア中央銀行に対しては、第1弾でのEUの資本・金融市場へのアクセス制限に加えて、同行が保有する資産や外資準備に関連した取引を新たに禁止した。なお、26日に発表した海外送金〔国際銀行間通信協会(SWIFT)〕システムからのロシアの一部銀行の排除(プレスリリース)については、詳細は明らかにされていない。
さらに、ロシアの航空会社が運航する航空機(コードシェア便を含む)、ロシア籍の航空機、ロシア国籍者・法人が所有・チャーター・管理する航空機(航空機の国籍を問わず)によるEU域内の発着と領空通過を原則禁止した。こうした航空機の運航制限に関しては、ロシアも対抗措置(2022年3月1日記事参照)に出ていることから、EUとロシア間だけでなく、ロシア上空を通過するEUと日本を含むアジア間のフライトも一部運休になるなど、既に影響が出ている。
ウクライナに人道支援だけでなく本格的な軍事物資の支援も決定
EU理事会は28日、ウクライナ軍への武器や装備品などの軍事物資の支援についても採択した。4億5,000万ユーロ分の殺傷兵器を含む5億ユーロ分の軍事物資を加盟国を通じて提供する見込み。今回の軍事物資の支援に関しては、EU全加盟国が協力するとしている。EUは軍事面を含めあらゆる分野での支援をウクライナに提供するとして、EUとしては史上初となる域外国への殺傷兵器提供の意義を強調した。
また、欧州委員会は同日、従来の経済支援に加えて、ウクライナ国内と隣国モルドバへの緊急人道支援として、9,000万ユーロを拠出することを決定した。
ウクライナが求めるEU加盟に関して、欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は27日、ウクライナは欧州の一員であり、加盟を希望すると述べたが、欧州委の報道官は翌28日の会見で、加盟には一連の条件を満たす必要があることを強調するなど、慎重な姿勢に終始した。EU加盟には、前提となる加盟候補国として認められた後に、何年にも及ぶ加盟交渉を経る必要がある。EU拡大の動きは全体的に停滞しており(2021年10月8日記事参照)、現時点ではウクライナは加盟候補国にすらなっていない。
(吉沼啓介)
(EU、ロシア、ウクライナ)
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