EU・西バルカンサミット開催、EU拡大に向けた進展見られず
(EU)
ブリュッセル発
2021年10月08日
2021年下半期のEU理事会(閣僚理事会)議長国を務めるスロベニア(2021年7月1日記事参照)は10月6日、EU・西バルカンサミットをスロベニアで開催した。西バルカン6カ国(アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、北マケドニア、コソボ)の首脳とEU加盟国首脳が同諸国のEU加盟問題などを協議した後、EU加盟国首脳はブルド宣言を採択した。この宣言は、同諸国の改革を条件としつつも、EU加盟に対するEUの明確な支持を再確認するもので、EU拡大はEUと同諸国の共通の戦略上の利益としている。
サミット後の記者会見で、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、西バルカン諸国のEU加盟なしに欧州統合は完成しないとして、今後も加盟交渉に引き続き尽力すると述べた。また、2020年10月に決定した同諸国のグリーン化、デジタル化などの分野に関する「経済投資計画」にも言及し、EUは90億ユーロの補助金を2027年までに提供する点などを挙げ、加盟に向けた支援の姿勢を強調した。
加盟時期など具体的な成果は示されず
EU加盟国と西バルカン諸国はEU拡大という方向性では一致しているが、加盟交渉は一向に進んでいない。モンテネグロとセルビアは2012年と2014年に加盟候補国として正式に加盟交渉が開始されたが、加盟に必要なEU法体系35分野の国内法制化の作業のうち、完了しているのは科学・研究開発、教育・文化などそれぞれ3分野と2分野にすぎず、加盟交渉は難航している。また、アルバニアと北マケドニアについては、欧州理事会(EU首脳会議)が2020年3月に交渉開始を承認しているが(2020年3月30日記事参照)、いまだに交渉が始まっていない。さらに、ボスニア・ヘルツェゴビナとコソボに至っては、交渉開始の前提となる加盟候補国の前段階の潜在的加盟候補国にとどまっているのが現状だ。
交渉難航の背景には、法の支配や腐敗防止といった加盟に向けた重点分野の改革の停滞という西バルカン諸国側の問題とともに、北マケドニアとの交渉開始に対するブルガリアの反対など、EU側の問題も指摘されている。記者会見でも、フォン・デア・ライエン委員長は、北マケドニアおよびアルバニアとの交渉開始の留保はEUの利益に反すると述べており、スロベニアのヤネス・ヤンシャ首相も両国との早期の交渉開始を求め、ブルガリアと北マケドニア間の問題なども並行して協議を進めるべきとした。また、ヤンシャ首相は、ブルド宣言で西バルカン諸国の加盟時期の目安を明記する意向だったものの、一部の加盟国の反対で実現しなかったとしている。今回のサミットは、EU議長国スロベニアが掲げた優先課題の1つとして実施したものだったが、具体的な進展は見られなかった。
(吉沼啓介)
(EU)
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