EU、ロシアに対する追加制裁を採択、プーチン大統領も対象に
(EU、ウクライナ、ロシア)
ブリュッセル発
2022年02月28日
EU理事会(閣僚理事会)は2月25日、ロシアによるウクライナへの軍事行動に対する制裁パッケージを正式採択した(プレスリリース)。制裁は、23日に採択されたパッケージ(2022年2月24日記事参照)に続く第2弾で、24日に開催された特別欧州理事会(EU首脳会議)における政治合意に基づき(2022年2月28日記事参照)、欧州委員会と外務・安全保障政策上級代表が共同立案し、EU理事会に提出していたものだ。
制裁ではまず、EU域内の資産の凍結や資金提供の禁止など個人に対する制裁の対象に、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とセルゲイ・ラブロフ外相らが追加された。制裁対象は合計で654人と52団体となった。
産業分野別の制裁は既に2月24日に、欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が特別欧州理事会後の記者会見において説明した線に沿い、金融・エネルギー・運輸のほか、軍事産業に関係する分野に対する制裁が強化された(注1)。金融分野ではロシア国有企業のEU証券市場における上場や、対象企業に対する金融サービスの提供を禁止するなど、従来の制裁を強化した。ロシアの金融市場関係企業や、国防関係を含む主要な国有企業の7割が金融分野の制裁対象になるという。海外送金〔国際銀行間通信協会(SWIFT)〕システムからのロシアの排除は制裁内容に含まれなかった(注2)。エネルギー分野では、石油精製に関連する商品や技術の販売・供給・移転・輸出を禁止する。運輸では、航空・宇宙産業関連の商品と技術の輸出を禁止する。EU理事会によれば、ロシアの商業用航空機の4分の3はEU、米国またはカナダで製造されており、航空機の販売のみならず交換部品の供給を止めることで、ロシアの航空産業に大きな打撃となる。さらに、軍事産業への転用が可能な二重用途品や、半導体技術を含む防衛・安全保障分野に影響する重要品目と技術への輸出制限を強化する。そのほか、外交官や政府関係者、ビジネス関係者へのビザ発給に制限をかける。
ジョセップ・ボレル・フォンテーリャス外務・安全保障政策上級代表(欧州委副委員長兼任)は「プーチン大統領とロシア政府は、独立した主権国家である隣国ウクライナに対して戦争を開始した。このようなロシア首脳の行為は、国際平和と安全保障に対する重大な脅威で、EUは可能な限り強力な制限措置によってこれに応じる」と述べた。
2月24日の特別欧州理事会では、今回の制裁内容の大枠合意のほか、ロシアの軍事行動に関わったとしてベラルーシに対しても個人への制裁および経済制裁を追加的に実施することを確認し、別途、準備が進められている。また今後、ウクライナからEU諸国への大規模な難民流入が予想されることから、EU加盟国からは欧州委および外務・安保政策上級代表に対し協調的な受け入れ計画の策定を求める声が上がった。
なお、欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長は2月25日付のツイッターで、今回の第2弾パッケージに加え「さらなる制裁パッケージを至急準備している」ことを明らかにした(注3)。
(注1)欧州委は2月26日、制裁の執行と欧州委の役割に関する説明資料を公表(プレスリリース)。
(注2)欧州委は2月26日にフランス、ドイツ、イタリア、英国、カナダ、米国との共同声明において、ロシアの一部銀行をSWIFTから排除することやロシア中央銀行が外貨準備を活用できないよう制限することなどに合意したと発表(プレスリリース)。
(注3)欧州委は2月27日にも追加の措置を発表。EU領空内へのロシア航空機の乗り入れ禁止、ロシア政府系メディアのEUでの活動禁止などの追加制裁のほか、ウクライナに対し武器や装備品などの調達を支援することを決定(プレスリリース)。
(安田啓)
(EU、ウクライナ、ロシア)
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