米上院、総額1.5兆ドルの2022年度本予算を可決、ウクライナ支援に136億ドル

(米国)

ニューヨーク発

2022年03月14日

米国上院は3月10日、2022年度(2021年10月1日~2022年9月30日)本予算案を賛成68、反対31で可決した。下院は9日に同内容で可決済みで、ジョー・バイデン大統領の署名を経て成立する。2022年度本予算の成立が遅れている米国では、それまでのつなぎ予算が既に3回作成されており、3回目のつなぎ予算の期限も3月11日までとなっていた(2022年2月18日記事参照)。期限切れによる政府機関の一時閉鎖を避けるため、本予算の成立が急がれていた。

今回の本予算の対象は裁量的経費で(注、2021年4月13日記事参照)、下院審議資料によると、その総額は約1兆5,000億ドル、前年度比6.2%増となっている。内訳として、国防費に6.7%増の7,820億ドルを計上し、不安定化する世界情勢に備える。国防費以外では7,300億ドルを計上(5.6%増)し、インフラ投資雇用法の施行を急ぎ進めている運輸や住宅都市開発向けに810億ドル、労働、保健福祉、教育向けに2,136億ドルを計上するなどの内容となっている(添付資料表参照)。また、ウクライナ支援として、食糧支援や防衛品提供などに136億ドルを計上している。与野党勢力が拮抗する上院だが、共和党が主張していた国防費増額の容認とウクライナ支援が盛り込まれたことが、超党派支持の広がる一因となった。一方で、バイデン政権が当初求めたとされる追加の新型コロナ対策予算は、州政府への財政援助削減によって財源を賄うという方針に下院の一部民主党議員が反対したため、今回は非計上となった(ブルームバーグ3月10日)。

本予算成立で9月末までの政府資金が手当てされたことにより、当面は政府閉鎖や米国債のデフォルトなどの懸念はなくなり、バイデン政権と議会は現下の山積する課題に注力できる。足元の優先課題はウクライナ情勢への対応だが、バイデン政権はロシアからのエネルギー禁輸措置を3月8日に決定し、即日で発効したほか、3月11日にはロシアを貿易上の最恵国待遇から外してその輸入品に高関税を課すなどの措置を発表しており(2022年3月14日記事参照)、ロシアへの経済制裁をさらに強めている。大統領の発表を受けて、議会では、ロシアへの最恵国待遇を撤回する法案が早期に審議される見込みだ(ロイター3月11日)。また、ウクライナ情勢以外でも、半導体支援を含む対中競争法案が下院で2月に成立しているが(2022年2月7日記事参照)、類似法案を既に成立させている上院との調整作業が急がれる。また、行き詰まりをみせているビルド・バック・ベター法案については、民主党で反対を表明したジョー・マンチン議員(ウェストバージニア州)と与党指導部が再調整を行っているとされている(ポリティコ3月2日)。11月の中間選挙までに、バイデン政権がどこまで政策実績を築けるか注目される。

(注)社会保障など義務的経費を除いた経費を指し、議会による歳出予算法の制定が毎年必要となる。

(宮野慶太)

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