バイデン米政権、ロシアへの最恵国待遇の撤回含む新たな制裁を発表、G7・EUと協調
(米国、ロシア、ウクライナ、日本、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、EU)
ニューヨーク発
2022年03月14日
米国のジョー・バイデン大統領は3月11日、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、G7諸国およびEUと協調して、ロシアに追加の制裁を科すと発表した。ホワイトハウスのファクトシートによると、追加の制裁措置は次のとおりで、G7による対ロ追加制裁に関する共同声明に沿った内容となっている。
- ロシアに対する貿易上の最恵国(MFN)待遇を撤回:米議会と協力してWTO加盟国に与えているMFN待遇をロシアについて撤回する。米国では関税設定の権限は議会に属するため、同措置の実施にはまず、議会がロシアとの恒久的正常貿易関係(PNTR)を撤回する法案を可決する必要がある。既に上下両院の超党派で合意は形成されており、民主党のナンシー・ペロシ下院議長(カリフォルニア州)は3月11日、「議会が翌週に再開次第、(ロシアとのPNTR撤回に関する)法案審議を行う」との声明を出している。PNTRが撤回されれば、行政府の権限でMFN待遇を撤回し、ロシアからの輸入に高い関税を設定することができる(注1)。
- ロシアによる多国間金融機関からの借り入れを拒否:G7首脳と合意の上、ロシアがIMFや世界銀行などから借り入れできないようにする。
- ロシアのエリート層とその家族を制裁対象に追加指定:ロシア財界の有力者・その親族やロシア議会の議員らを制裁対象に追加指定する。財務省は同日、「特別指定国民(SDN)」への追加指定を発表した(注2)。
- ロシアへの奢侈(しゃし)品輸出の禁止:米国人(注3)によるロシア国内のいかなる個人・事業体への奢侈品の輸出を禁止する。高級な腕時計、乗用車、衣服、アルコール飲料、宝飾品などが含まれ、年間の対ロ輸出額は5億5,000万ドルに上る。
- ロシアの主要産業からの輸入を禁止:ロシアからの水産物やウオッカ、ダイヤモンドなどの輸入を禁止する。これによりロシアによる約10億ドルの収益を遮断する。
- 暗号資産(仮想通貨)の利用を含む制裁回避を防ぐための財務省によるガイダンス:財務省の新たなガイダンスを通じて、全ての米国人がいかなる通貨による取引かを問わず、対ロ制裁措置を順守することが求められることを明確にしていく。
- ロシアの全産業に対する新規投資を禁止する権限を創設:財務長官が国務長官との調整を経て指定したロシアの産業に対して、米国人による新規投資を制限する権限を創設する。
なお、上記の4、5、7に関しては、これら措置に法令上の根拠を与えるための新たな大統領令を発令している。また、4に関しては商務省が大統領令を受けて、輸出禁止の対象として、ベラルーシ国内の全ての個人・事業体および、ロシアとベラルーシの富豪や一部の悪質な行動者(所在地を問わない)を追加すると発表している。詳細は3月16日公示予定の官報を参照。
(注1)2021年における米国のロシアからの輸入額は約297億ドルで、国別では19位、輸入全体に占める割合は1%(米国際貿易委員会)。
(注2)SDNに指定された対象には、(1)在米資産の凍結、(2)米国人(注3参照)との資金・物品・サービスの取引禁止が科される。また、同社が直接または間接的に50%以上を所有する事業体も、同じ制裁の対象となる。ウクライナ情勢に関する財務省の制裁の全容については、財務省の「ウクライナ/ロシア関連制裁」のポータルサイトを参照。また、制裁対象に指定された個人・企業などについては、同省外国資産管理局(OFAC)のデータベースで、Country欄においてRussiaを選択し、Searchをクリックすることで確認が可能。
(注3)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。
(磯部真一)
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