バイデン米大統領、一般教書演説でロシアを批判、内政はインフレ対策に焦点
(米国、ロシア、ウクライナ)
ニューヨーク発
2022年03月03日
米国のジョー・バイデン大統領は3月1日、就任後初となる一般教書演説を行った。支持率が2021年1月の就任以来最低レベルの40%程度で推移する中、2022年11月の中間選挙に向けて民主党に勢いをつける最大の機会だった(注1)。
バイデン大統領は冒頭でウクライナ危機を取り上げ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を厳しく批判するとともに、ウクライナへの継続的な支援を強調した。また、新たな対ロ制裁として、ロシア航空機による米国の領空通過の禁止を発表(注2)するとともに、米国の産業界や消費者を守るとして、国際エネルギー機関(IEA)が同日発表した6,000万バレルの石油備蓄の放出に言及した(2022年3月2日記事参照)。
その後は内政に焦点を当て、就任後1年余りの実績と議会に可決を求める法案や、連邦政府が取り組む優先課題に時間を割いた。米国はこの2年間、新型コロナウイルスに苦しんだが、2021年3月に成立した米国救済計画(2021年3月16日記事参照)が経済と雇用を支えたと述べ、その成果を自賛した。続いて、同年11月に成立したインフラ投資雇用法(2021年11月9日記事参照)は超党派の成果だと強調し、向こう10年で道路や橋の修繕、高速インターネットや電気自動車(EV)充電所の普及を推進するとした。加えて、その過程でバイ・アメリカンを徹底する姿勢を示した。この点は1年前の施政方針演説でも強調していた(2021年4月30日記事参照)。
議会に早期可決を求める筆頭の法案としては、中国を念頭に置いた競争力法案を挙げた。上下両院で半導体産業への補助金予算などを含む法案は可決済みだが、付帯の通商関連条項で相違があり、両院合同委員会での法案調整作業が待たれている(2022年2月2日記事参照)。続いて「価格を統制することが最優先事項」と述べ、インフレ対策に焦点を移し、処方箋薬価やエネルギー、育児関連のコストを下げる必要があるとした。特にEV購入補助など現在推進している気候変動対策が実現すれば、1世帯当たり年間平均500ドルのエネルギーコストが削減されるとその重要性を訴えた。それらの財源として、グローバル企業の国外利益に対する15%の最低税率や富裕層に対する追加の所得税率を充てる考えを示した。これらは前年来、政権の目玉政策として調整していたビルド・バック・ベター法案に含まれている内容だが、前年末に民主党内の中道派議員が反対を表明して以降、動きが停滞している(2021年12月23日記事参照)。
その他、新型コロナウイルス感染の状況については「安全に前進しており、より正常な日常に戻っている」としつつ、新たな変異株の出現などに備えるとした。また、超党派で取り組める案件として、オピオイド対策や子どものメンタルヘルス対策、退役軍人の支援拡充、がん撲滅を挙げた。最後は「米国は強い状態にある。なぜなら米国民が強いからだ」と締めくくった。CBSニュースが演説直後に行った調査(注3)によると、視聴者の78%が内容を支持しているという。
(注1)上院は全100議席中、民主党が50議席、共和党が50議席で、上院議長を兼ねるカマラ・ハリス副大統領が加わることで民主党が多数党となっている。下院は全435議席中、民主党が222議席、共和党が211議席、空席が2議席(3月2日時点)。
(注2)米運輸省のプレスリリースによると、同措置は米国時間3月2日深夜までに完全に有効となる。
(注3)演説を視聴した1,486人の成人に対するアンケート調査結果。
(磯部真一、宮野慶太)
(米国、ロシア、ウクライナ)
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