2月の米消費者物価上昇率、前年同月比7.9%で伸び加速、前月に続き40年ぶりの伸び

(米国)

ニューヨーク発

2022年03月11日

米国労働省が3月10日に発表した2022年2月の消費者物価指数(CPI)の上昇率PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は前年同月比7.9%、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同6.4%となった。民間予想はそれぞれ7.8%、6.4%だった(添付資料図参照)。CPIは1982年1月、コア指数は1982年8月以来の高い上昇幅だった。前月比では消費者物価指数は0.8%上昇、コア指数は0.5%上昇、民間予想はそれぞれ0.7%、0.5%で、こちらも民間予想とほぼ一致している。

品目別に前年同月比で見ると、食料品が7.9%上昇(前月:7.0%上昇、2022年2月15日記事参照)と伸びが加速しており、特に家庭用食品が8.6%上昇(7.4%上昇)と大きく伸びている。ガソリンは38.0%上昇(40.0%上昇)で、前月に引き続き伸びは鈍化したが、前月比では6.6%と大きく伸びている。財では中古車が41.2%上昇、新車12.4%上昇と引き続き高く、財全体でも前年同月比12.3%上昇と前月(11.7%上昇)よりさらに伸びた。サービスは4.4%上昇で、財に比べると小幅だが、物価全体で3割程度のウエートを占める住居費が4.7%上昇(4.4%上昇)と伸びが引き続き加速している。航空運賃は12.7%上昇で、前月(4.9%上昇)からさらに大きく伸びた(添付資料表参照)。

2月も前月までと変わらない全般的な物価高基調に加え、ウクライナ情勢の緊迫化によって原油が高騰していることから、1月まではやや落ち着きを見せ始めていたガソリン価格も再び大きな上昇に転じており、3月10日時点で国内の平均ガソリン価格は1ガロン(約3.8リットル)当たり4.318ドルとなり、過去最高値をつけている。さらに、ロシアやウクライナは小麦などの大生産地でもあることから、食料品の価格上昇も顕著となっている。こうした価格上昇による家計の年間負担の増加額は、ガソリンで約2,000ドル、食料品で約1,000ドルに達するという民間機関の推計値もあり、家計の大きな負担となって消費活動を抑える要因になり得る。実際に、全米自動車協会の調査では、約6割の回答者はガソリン価格が1ガロン当たり4ドルを超えれば運転習慣やライフスタイルを変えるとしており、4ドルを超える現状が長く続けば、消費を減退させる恐れがある。また、家計の支出の中でウエートが大きい住居費の上昇も大きな懸念材料だ。民間機関調査によると、ニューヨーク市マンハッタンのアパート賃貸料の中央値は2月に過去最高値の3,630ドル、前年同月比で約28%上昇と、これまでの住宅価格の上昇がここにきて賃料にも大きく波及している。賃料は毎月の大きな固定費だけに、その急激な上昇も消費を冷やす恐れがある。

米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は次回の連邦公開市場委員会(FOMC、3月15、16日)で0.25ポイントの政策金利引き上げを提案・支持する意向を既に明らかにしており(2022年3月7日記事参照)、インフレ対応を急ぐ考えだ。しかし、今回の高インフレはウクライナ情勢による原油高やサプライチェーン逼迫など、主に供給サイドから生じており、金利引き上げはこれらに直接作用するものではないことから、FRBが金利引き上げをやり過ぎれば、高インフレと景気後退が同時に進行するスタグフレーションを招きかねないという指摘もある。パウエル議長が次回FOMCでどういうメッセージを市場に発するのか、注目が集まる。

(宮野慶太)

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