欧州理事会、対ロシアで団結を強調も、新たなコロナ対策の協調は打ち出せず

(EU)

ブリュッセル発

2021年12月20日

欧州理事会(EU首脳会議) が12月16日、ブリュッセルで開催された。今回の欧州理事会では、新型コロナウイルス対策をはじめ、高騰するエネルギー価格、緊張が高まっているロシアやベラルーシへの対応といった対外政策、安全保障などが協議された。

EU域内では、主にデルタ株による新型コロナウイルスの第4波が続く中、12月以降は新たな変異株であるオミクロン株が急速に広がっており、EU域内の移動に関して、加盟国間での対応が分かれている。欧州委は11月25日、ワクチン接種者などの「EUデジタルCOVID証明書」の所持者に対しては、陰性証明書の提示や自主隔離といった追加的措置を原則として課さないとするEU理事会(閣僚理事会)の勧告案(2021年11月26日記事参照)を提案した。しかし、その後のオミクロン株の拡大を受けて、ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャなどが、EU域内からのワクチン接種済みの旅行者に対しても、陰性証明書の提示を求めるなど、域内移動の規制が強化されつつあり、加盟国間の協調的な対応には至っていない。欧州理事会の終了後に発表された総括PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)でも、勧告案の早期の採択を求めるにとどまった。

一方で、欧州理事会は、ワクチンの接種率を向上させるとともに、ブースター接種を推進する点では一致した。欧州理事会後の記者会見で、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、ワクチンの共同調達のための事前購入契約に基づき、ワクチン製薬会社は新たな変異株に対応したワクチンを100日以内に開発することになっており、米国ファイザー・ドイツのビオンテックに対し、第1弾として、1億8,000万回分の変異株対応型ワクチンを発注することで加盟国と合意したと発表した。

前回の欧州理事会(2021年10月25日記事参照)で焦点となった、電力市場やEU排出取引制度(EU ETS)の改正を含めたエネルギー価格の対応策に関しては、加盟国間の意見の相違がいまだ大きいことから、総括には盛り込まれず、2022年の欧州理事会に持ち越しとなった。

ロシアやベラルーシに対するさらなる制裁を実施する用意があると強調

国境地帯での軍事的緊張が高まっているロシアとウクライナに関しては、欧州理事会は、ウクライナの主権と領土の一体性を完全に支持するとともに、ロシアがウクライナに軍事侵攻をした場合には、制裁を含めたさらなる制限的措置の実施により、ロシアは「多大な代償」を払うことになると警告。ロシアに対して、直ちに軍事的緊張を緩和させるよう要求した。

また、欧州理事会は、ベラルーシ政府が国境を接する加盟国に移民や難民を意図的に送り込んでいるとする問題(2021年9月13日記事参照)に関して、ベラルーシを強く非難。EUの域外国境の警備を強化するとともに、既に発動されている制裁(2021年11月17日記事参照)に加えて、必要に応じてさらに制裁を強化する用意があるとした。

(吉沼啓介)

(EU)

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