欧州委、EU域内移動に関する新たな勧告案を発表、ブースター接種を推進
(EU)
ブリュッセル発
2021年11月26日
欧州委員会は11月25日、EU域内〔欧州経済領域(EEA)に参加するアイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタインを含む〕の移動に関するEUレベルの共通の指針となるEU理事会(閣僚理事会)の新たな勧告案を提案(プレスリリース)した。
今回、大きく変更されるのは、他の加盟国への移動の際の検査や検疫・自主隔離などの追加的な措置に関して、これまで欧州疾病予防管理センター(ECDC)が感染状況に応じて各加盟国を地域別に色分け(2021年6月15日記事参照)し、各加盟国が旅行者の出発地域の色分けに応じて適用する措置を区別するという出発地を基準とした対応から、旅行者ごとの「個人レベルのアプローチ」に切り替える点だ。
新型コロナウイルスのワクチン接種・回復・陰性に関する有効な「EUデジタルCOVID証明書」(2021年3月18日記事参照)を所持する旅行者は、原則として、域内の出発地に関係なく、追加的な措置の対象とすべきでないとする。同証明書を所持していない旅行者に対しては、各加盟国は追加的な措置を課すことができる。また、ECDCによる色分けは今後も継続し、例外的に、感染状況の最も良い「緑」の地域からの旅行者には、「EUデジタルCOVID証明書」の所持にかかわらず、追加的な措置を課すべきでないとする。感染状況が最も悪い「濃い赤」の地域からの、または同地域への必要不可欠でない移動に関しては、自粛を要請した上で、同地域からの陰性証明書を用いた旅行者に対しては、出発前の検査に加えて、到着後10日間の検疫・自主隔離を課すべきとしている(最短で到着後5日目の検査で陰性の場合は、それ以降の検疫・自主隔離を免除できる)。さらに、必要不可欠な労働者、国境地域の住民、12歳未満の子供に対しては、例外規定を設ける。
なお、欧州医薬品庁(EMA)は11月25日、米国ファイザー・ドイツのビオンテックが開発したワクチンの接種対象年齢をこれまでの12歳以上から5歳以上に引き下げる勧告を発表しており、今後は5歳から11歳へのワクチン接種も開始されるとみられる。
域内全域でのブースター接種の推進を明確に
ワクチンのブースター接種に関して、ECDCは11月24日、これまでの緊急の必要性はないとの見解(2021年9月3日記事参照)を変更し、加盟国に対して、接種完了から6カ月以上を経過した全ての成人を対象とした実施の検討を要請する声明(プレスリリース)を発表した。これを受けて、欧州委の今回の勧告案は、これまで設定されていなかったワクチン接種証明書のEU域内共通の有効期限に関して、最後の接種から9カ月間(注)とすることを提案。同期間を経過した接種証明書の利用を認めず、ブースター接種に基づく新たな接種証明書の取得を求める方針とした。欧州委は、域内全域での全成人を対象としたブースター接種を推進する立場を明確にしたことになる。
EU理事会が今回の勧告案を採択した場合、2022年1月10日から適用開始となる。各加盟国は、採択された勧告を考慮した上で、域内移動に関する措置を講じることが求められることになる。
(注)ECDCの6カ月経過後にブースター接種という基準に、ブースター接種の進捗状況を踏まえ、3カ月の猶予期間を追加。
(吉沼啓介)
(EU)
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