米国10月の非農業部門雇用者数は53.1万人増、失業率は4.6%に低下
(米国)
ニューヨーク発
2021年11月09日
米国労働省が11月5日に発表した10月の非農業部門の雇用者数は前月から53万1,000人増で、ダウ・ジョーンズがまとめた市場予想(45万人増)を上回った。また、失業者数が前月から25万5,000人減少したことに加え、就業者数が35万9,000人増加したことにより、失業率は4.6%(添付資料図および表1参照)と、前月(4.8%)より改善した。なお、9月の非農業部門の雇用者数も19万4,000人増から31万2,000人増へと上方改定された(2021年10月11日記事参照)。
失業者のうち、一時解雇を理由とする失業者数は前月(112万4,000人)より6万8,000人減少して105万6,000人、恒常的な失業者数は前月(225万1,000人)より12万5,000人減少して212万6,000人となった。
労働参加率(注)は前月と同じ61.6%だった。失業給付打ち切りや学校再開などにより職探しを再開する人の増加期待もあり、10月の労働力人口は前月から10万4,000人増加した。
平均時給は31.0ドル(9月:30.9ドル)と、前月比0.4%増(9月:0.6%増)、前年同月比4.9%増(9月:4.6%増)となっている(添付資料表1参照)。
10月の非農業部門雇用者数の前月差は、53万1,000人増と前月の増加幅(31万2,000人増)から拡大した。前月からの雇用増減の内訳をみると、民間部門は60万4,000人増で、そのうち財部門が10万8,000人増となり、製造業で6万人増、建設業は4万4,000人増とともに増加している。サービス部門は49万6,000人増で、娯楽接客業16万4,000人増、対事業所サービス10万人増、教育・医療サービス業6万4,000人増など全般的に増加した。一方で、政府部門は7万3,000人減と3カ月連続で減少した(添付資料表2参照)。
また、人種別の雇用状況について、9月のそれぞれの失業率は、白人4.0%(前月:4.2%)、ヒスパニック・ラテン系5.9%(6.3%)は前月から改善、アジア系4.2%(4.2%)、黒人7.9%(7.9%)は前月と横ばいだった。
10月の堅調な数値に加え、9月分も今回上方改定されたことから、雇用回復ペースの改善が確認される結果となった。先日開かれた連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)で11月からの量的緩和策の縮小開始が決定されたが(2021年11月5日記事参照)、政策金利の引き上げについてジェローム・パウエルFRB議長は「(雇用を最大化できておらず)まだ利上げの時期ではない」としつつ、最大雇用を2022年後半までに達成可能と考えるかという質問に対し、「昨年(2020年)の進捗をみれば、このペースが続くのであれば、答えは『イエス』となるだろう」と述べており、今後の雇用の回復に自信をのぞかせている。
一方で、懸念は人手不足だ。今回、失業率は低下したが労働参加率は横ばいで、新型コロナウイルスの感染拡大以前(63%程度)と比べると低水準が続いており、人々が労働市場に戻りきっていないことがうかがえる。人手不足を背景に人件費が上昇しており、今回も時給は前年同月比4.9%増と高水準になった。また、労働省によると、9月の雇用コスト指数は前月比1.3%上昇し2001年以降で最大の伸びとなった。賃金上昇を訴えるストライキが各地で発生していることや、先日発表された民間企業に対するワクチン接種義務化(2021年11月5日記事参照)に反発した退職なども予想されることから、人手不足およびそれに伴う賃金上昇圧力が今後も続く可能性がある。
(注)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に占める労働力人口(就業者+失業者)の割合。
(宮野慶太)
(米国)
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