米国9月の非農業部門雇用者数は19.4万人増と予想を下回るも、失業率は4.8%に改善

(米国)

ニューヨーク発

2021年10月11日

米国労働省が10月8日に発表した9月の非農業部門の雇用者数は前月から19万4,000人増で、ダウ・ジョーンズがまとめた市場予想(50万人増)を大きく下回った。一方、失業率は4.8%で、市場予想(5.1%)よりも改善した(添付資料図、表1参照)。失業者数が前月から71万人減少したことに加え、就業者数が52万6,000人増加したことにより、失業率は前月(5.2%)から0.4ポイント低下した(2021年9月7日記事参照)。

失業者のうち、一時解雇を理由とする失業者数は前月(125万2,000人)より12万8,000人減少して112万4,000人、恒常的な失業者数は前月(248万7,000人)より23万6,000人減少して225万1,000人となった。

労働参加率(注)は、前月より0.1ポイント低い61.6%だった。新型コロナウイルス対策の失業給付の打ち切りなどにより職探しを再開する人の増加が期待されたが、9月の労働力人口は前月から18万3,000人減少した。

平均時給は30.9ドル(8月:30.7ドル)で、前月比0.6%増(8月:0.4%増)、前年同月比4.6%増(4.0%増)となり、ともに伸びが拡大した(添付資料表1参照)。

9月の非農業部門の雇用者数の前月差は19万4,000人増と前月の増加幅(36万6,000人増)から減少した。8月から9月にかけての雇用増減の内訳をみると、民間部門は31万7,000人増で、そのうち財部門が5万2,000人増となり、製造業で2万6,000人増、建設業は2万2,000人増と主な2業種はともに増加している(添付資料表2参照)。サービス部門は26万5,000人増で、主に娯楽・接客業(7万4,000人増)、対事業所サービス(6万人増)、小売業(5万6,000人増)、運輸倉庫業(4万7,000人増)などが増加した。一方で、教育・医療サービス業は7,000人減と1月以来の減少になった。加えて、政府部門も12万3,000人減と大きく減少した。

また、9月の人種別の雇用状況について、それぞれの失業率は、白人4.2%(前月:4.5%)、アジア系4.2%(4.6%)、ヒスパニック・ラテン系6.3%(6.4%)、黒人7.9%(8.8%)と、全てで前月から改善している。

デルタ型変異株の感染拡大の影響で、8月に引き続き振るわない雇用情勢となったが、一方で企業の人手不足は深刻になってきている。労働省が発表している雇用動態調査(7月)によると、非農業部門の求人件数は過去最高の約1,090万件となったのに対して、採用数は約670万人にとどまり、雇用の需給が大きくひっ迫している。この影響により、今回の雇用統計でも9月の時給は大きく上昇した。また、連邦政府やニューヨーク州など、公務員や医療従事者、企業に対してワクチン接種を義務化する動きが広がっているが(2021年7月28日記事参照)、人手不足のますますの加速を懸念する声も上がっているという(「USAトゥデイ」9月12日)。今回失業率は下がったものの労働参加率も下がっていることから、労働供給が増えていないことが示唆される。連邦準備制度理事会(FRB)は年内からの量的緩和縮小を開始する姿勢を取っているが(2021年9月24日記事参照)、弱含みが続いている雇用の情勢と逆に高止まりする物価動向をどう踏まえるか、11月に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)に注目が集まる。

(注)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に占める労働力人口(就業者+失業者)の割合。

(宮野慶太)

(米国)

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