ポーランド政府、復興基金のための計画を欧州委に提出
(ポーランド、EU)
ワルシャワ発
2021年05月17日
ポーランド政府は5月3日、EUの復興基金(2020年9月24日付地域・分析レポート参照)による支援を受けるための「国家復興計画」を、欧州委員会に正式に提出した。国家復興計画では、復興基金から総額359億7,000万ユーロ(238億5,800万ユーロの返済不要の補助金と121億1,200万ユーロの融資)のポーランドへの拠出を求めている。
国家復興計画は以下の5つの柱で構成されている。
- 経済の強靭(きょうじん)性と競争力の強化(47億ユーロ、全体の13.1%):「新型コロナウイルス禍」で最も打撃を受けた業種の回復、投資環境の向上、農業や職業専門教育システム改革などを目的とする投資、改革。
- グリーンエネルギーとエネルギー消費削減(143億1,300万ユーロ、全体の39.8%):大気の浄化、再生可能エネルギーや代替エネルギーの利用支援、水素技術補助などを目的とする投資、改革。
- デジタル化(48億9,700万ユーロ、全体の13.6%):高速インターネット普及、第5世代移動通信システム(5G)インフラ整備、学校のインターネットインフラ改善などを目的とする投資、改革。
- 保健システムのアクセシビリティ確保と品質向上(45億4,200万ユーロ、全体の12.6%):保健施設の現代化、地方病院への助成金、医療・保健システムのデジタル化、製薬と医学研究支援に関わる投資、改革。
- グリーン・モビリティー(75億1,800万ユーロ、全体の20.9%):バスとトラムのゼロ排出車両や低排出車両への切り替え、鉄道インフラの現代化とゼロ排出車両への切り替え、交通安全向上などを目的とする投資、改革。
財務省は復興基金による投資により、今後5年間でポーランドのGDPは1.3%、雇用は0.4%増加すると予測している。
なお、国家復興計画の実行に必要なEU復興基金の枠組み(2021年2月15日記事参照)を批准する法案は5月4日に下院で可決され、今後、上院で審議の予定。ただし、同法案をめぐり与党内での対立(2020年11月2日記事参照)が再燃しており、連立与党「連帯ポーランド」は、「復興基金の立ち上げに関する今次法案は、将来的にポーランドの主権を脅かし経済を害する恐れがある」との声明を発表した。
そのため、最大与党「法と正義(PiS)」は、野党と交渉する必要が生じた。野党が法案に賛成する代わりに、PiSは国家復興計画の内容に関する修正を承諾し、復興金の30%は地方自治体に託されることや地方病院助成金を復興計画に盛り込むことなどに同意した。
(ニーナ・ルッベ)
(ポーランド、EU)
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