EU理事会、復興基金「次世代のEU」の中核部分を正式採択
(EU)
ブリュッセル発
2021年02月15日
EU理事会(閣僚理事会)は2月11日、復興基金「次世代のEU」の中核部分である「復興レジリエンス・ファシリティー」(注)の設立規則を正式採択した。「復興レジリエンス・ファシリティー」は、「新型コロナ危機」に対する加盟国への復興支援策で、6,725億ユーロ(補助金3,125億ユーロ、融資3,600億ユーロ)と、総額7,500億ユーロの復興基金の約9割を占める(金額はいずれも2018年を基準とした額)。欧州議会も2月10日に同規則を承認しており、規則は2月19日に施行される見込みになっている。
原資となるEU名義の債券発行には別途、全加盟国の批准が必要
設立規則の採択により、加盟国が支援を受けるための仕組みが整えられた。加盟国は4月30日までに「復興レジリエンス計画」を欧州委員会に正式に提出し、欧州委の審査、EU理事会の承認を得なければならない。各加盟国は既に、計画案の事前打診を欧州委に行っている段階だ。計画では、予算の37%以上をグリーン化への移行、20%以上をデジタル化に割り当てるなどの条件が課されている。設立規則には、グリーン化、デジタル化への貢献を数値化する方法も細かく規定されている。返済不要の補助金部分の加盟国ごとの割当額の70%は、加盟国の人口、1人当たりGDP、2015~2019年の失業率を考慮して算出されている。残りの30%は失業率に代えて、2020年の実質GDPの減少分や2020~2021年の実質GDPの累積減少分に応じて割り当てられる(添付資料表参照)。予算の13%は前払い分として計画提出時に欧州委に申請できるが、大部分は加盟国が計画を実施した上で、達成状況を踏まえて執行される。
ただし、今回の規則採択だけで、復興基金の予算執行までの道筋がついたわけではない。復興基金の財源は、欧州委がEU名義の債券を発行して市場から調達することになっているが、その決定には別途、全ての加盟国の批准が必要となる。欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は規則の採択を受けて、EU議長国ポルトガルのアントニオ・コスタ首相、欧州議会のダビド=マリア・サッソーリ議長との共同記者会見で、EU名義債券の発行に必要な独自財源決定の可能な限り速やかな批准を全ての加盟国に求めた。
(注)復興基金の詳細は、2020年9月24日付地域・分析レポート「徹底解説:EU復興パッケージ(第2回)」参照。
(安田啓)
(EU)
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