欧州委、復興基金財源のEU名義債券の発行計画を発表
(EU)
ブリュッセル発
2021年04月16日
欧州委員会は4月14日、新型コロナウイルス危機対策である復興基金「次世代のEU」の財源となるEU名義の債券発行など市場からの資金調達に関する戦略を発表した。復興基金は予算の約9割を占める復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)(2021年2月15日記事参照)などを通じて、名目額ベースの合計で4,075億ユーロの補助金と最大3,860億ユーロの融資を加盟国に提供し、さらに別途125億ユーロをEUの政策に提供するものだ。欧州委は復興基金の財源に充てるために、市場からの資金調達を2026年末まで年間最大1,500億~2,000億ユーロ(合計で最大8,060億ユーロ)ずつ実施する予定だ。今回の戦略は、債券の発行規模が巨額になることを考慮し、資金調達を最良の条件で実施することを目指すものだ。
今回の戦略によると、欧州委はまず年間の資金調達の上限額を決定し、半年ごとの資金調達計画を策定した上で、債券発行を実施する。発行するのは償還期間が3年から30年までの中長期債を中心とし、1年未満の短期債も発行する。また、復興基金の3割(最大で2,500億ユーロ)はグリーンボンド(環境分野の事業に使用する資金を調達するために発行する債券)によって調達することをあらためて示した。さらに、債券発行に当たっては、一定の条件を満たした金融機関などからなる「プライマリーディーラー(注1)ネットワーク」を導入し、プライマリーディーラーが債券を引き受けて投資家に販売する。債券発行は電子プラットフォーム上での公募入札により実施する。中長期債の発行では複数のプライマリーディーラーなどからなるシンジケート団引き受け(注2)を用いる場合もあるが、短期債の発行は公募入札のみとする。
欧州委は今後、この戦略に基づき、プライマリーディーラーネットワークの立ち上げや、2021年の年間資金調達額の決定や、半年ごとの資金調達計画の策定などを早期に進め、まず9月以降に短期債の初回の発行を目指すとしている。ただし、この発行には、既に完了しているEU側の承認手続きだけでなく、全加盟国による独自財源決定の承認も必要となる(2020年12月21日記事参照)。約半数の加盟国では既にこの承認手続きが完了しているものの、連邦憲法裁判所の判断を待つドイツなど一部の加盟国では、いまだに承認のめどが立っておらず、債券の発行が予定どおりに進むかは未知数だ。
(注1)債券発行当局の指定を受け、入札に参加し、直接取引できる証券会社や銀行のこと。日本では「国債市場特別参加者」と呼ばれる。
(注2)複数の金融機関で構成する引き受けシンジケート団と債券発行当局との合意に基づく発行方式。
(吉沼啓介)
(EU)
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