次期中期予算計画を正式に採択、2021年1月から執行開始

(EU)

ブリュッセル発

2020年12月21日

EU理事会(閣僚理事会)は12月17日、前日の欧州議会での採択を受け、2021~2027年度の中期予算計画(多年度財政枠組み:MFF、以下、次期MFF)(注)を採択した。これは、EU理事会と欧州議会が2020年11月10日に政治合意(2020年11月11日記事参照)した次期MFF法案を両機関が正式に承認したものだ。これにより、2018年から始まった次期MFFをめぐる一連のプロセスは、最終局面でのハンガリーとポーランドによる反対などの波乱(2020年12月15日記事参照)があったものの無事終了し、2021年1月1日から次期MFFは執行されることになる。

また、新型コロナウイルス対策の特別予算である復興基金に関しても、その財源となるEU名義の債券の発行権限を欧州委員会に付与するための独自財源決定や、復興基金の予算の9割近くを占める「復興レジリエンス・ファシリティ(RRF)」(2020年9月18日記事参照)などの基礎となる復興基金の設置法案を、EU理事会は12月14日に採択している。独自財源決定には今後、各加盟国の憲法上の要件に従った批准手続きが全加盟国で必要となることから、正式な成立には数カ月の時間を要するとされるが、これによりEU諸機関による手続きはほぼ終了したかたちだ。

次期MFFと復興基金の最終的な予算額PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、合計1兆8,243億ユーロとなる。なお、欧州議会が要求し、11月10日のEU理事会との合意で決定されたEUの個別政策への追加分外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、これとは別枠だ。

「復興」に向け、各政策の詳細も決定

また、このほかに、次期MFFと復興基金の内訳となるEUの各施策の詳細もほぼまとまった。EUの研究開発支援枠組みである「ホライズン・ヨーロッパ」、人工知能(AI)やサイバーセキュリティーなどの戦略的デジタル技術に投資する「デジタル・ヨーロッパ」、投資基金や投資助言サービスなどからなる投資促進策である「インベストEU」、保健衛生上の危機への対処を目的とした新保健プログラムである「EU・フォー・ヘルス」などの各政策に関して、EU理事会と欧州議会は12月14日の週にかけて政治合意した。正式な成立は2021年初頭にずれ込むものの、2021年1月から遡及(そきゅう)的に適用される予定だ。

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、各加盟国が厳しい制限的措置を引き続き課しているEUだが、次期予算が正式に決まったことで、2021年1月から「新型コロナ危機」からの復興に向けて、本格的に動き出すことになる。

(注)次期MFFと復興基金の詳細については、地域分析レポート「徹底解説:EU復興パッケージ」(第1回第2回)を参照のこと。

(吉沼啓介)

(EU)

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