欧州委、北アイルランドへの食品移送に関する英政府の判断を批判

(EU、英国)

ブリュッセル発

2021年03月05日

欧州委員会のマレシュ・シェフチョビチ副委員長(EU機構関係・将来予測担当)は3月3日、北アイルランドへの食品の移送に関する英国政府の声明を批判する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。英国のブランドン・ルイス北アイルランド相が同日に、スーパーマーケットとそのサプライヤーに対して、グレートブリテン島から北アイルランドへの食品移送において求められる証明書の提出免除など、現在の緩和された措置を2021年10月1日まで延長するなどとした声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを受けての批判だ。現状4月1日まで認められている同緩和措置の延長は、英国のEU離脱協定を実行に移すためのEU・英国合同委員会での論点の1つになっていたが、直近の第6回通常会合(2月24日)では結論は出ていなかった(2021年2月26日記事参照)。

「英国政府による2度目の国際法違反」と批判

シェフチョビチ副委員長は、両者の合意を経ずに英国が単独で延長を判断したことに対し、アイルランド・北アイルランド議定書(以下、議定書)に違反し、離脱協定の信義誠実原則にも反すると指摘。2020年9月に問題が顕在化し、その後、同12月に合同委員会で解決に至った「英国国内市場法」案(2020年12月18日記事参照)に続く、「英国政府による2度目の国際法違反だ」と強く批判した。同副委員長は、これまで合同委員会を通じて、議定書に基づく解決策を両者で模索してきたにもかかわらず、合同委員会の共同議長である自身に連絡なく、英国が単独行動をとったことに失望したと表現した。

同副委員長は同3日夜、ともに合同委員会およびEU・英国間の通商・協力協定(TCA)下に設置された両者のパートナーシップ協議会の共同議長の任に就いたばかりのデイビッド・フロスト内閣府担当相と電話会談を行った。フロスト担当相は会談で、同日に発表した措置は、スーパーマーケットや輸送業者が議定書に基づく新しい要求事項に適応する時間を確保するための暫定的でテクニカルな措置であり、実務の運用上、必要最低限の内容だと説明。そのような実務的な取り決めはこれまでの貿易協定においても前例があり、議定書の義務を履行する英国の立場に変わりはないと理解を求めた。両者は引き続き、緊密に対話していくことを確認した。

今回の英国の判断を受けて、欧州議会・国際貿易委員会(INTA)のベルント・ランゲ委員長(ドイツ選出)は3月4日付ツイッターで、「英国が離脱協定に違反する、もしくは違反をする意図がある場合は、欧州議会はEU英国間の協定を批准することは難しい」と述べ、欧州議会によるTCAの批准(2021年3月1日記事参照)にも影響を与える可能性を示唆した。

(安田啓)

(EU、英国)

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