バイデン氏が米大統領に就任、初日から新型コロナ対応やパリ協定復帰などに着手
(米国)
ニューヨーク発
2021年01月21日
米国の民主党のジョー・バイデン前副大統領が1月20日、第46代大統領に就任した。女性初の副大統領に就任したカマラ・ハリス前上院議員(カリフォルニア州)とともに今後4年間、米行政府を運営する。バイデン新大統領は就任演説で「全ての米国民の大統領になる」と述べ、米国民に結束を呼び掛けた。また、新型コロナウイルスなどに関する大統領令などに署名し、就任初日から優先課題に対する積極的な取り組み姿勢を示した。
バイデン大統領は就任演説の冒頭で「民主主義が打ち勝った」と強調した。また、1月6日に起きた連邦議会議事堂での暴動に触れつつ、政治的な過激主義や白人至上主義、国内テロに立ち向かって打倒するとし、米国民に「結束」を繰り返し呼び掛けた。外国に向けては「同盟を修復し、再び世界に関与する」ことで「平和と進歩、そして安全保障にとって強く信頼できるパートナーになる」と国際協調主義を強く打ち出した。
バイデン大統領は就任日の20日中に、自身が優先課題に挙げる政策分野に関する複数の大統領令などに署名した。新型コロナウイルス対策では「100日間のマスク着用対策」と名付けた取り組みを始動し、米国民にマスク着用を奨励した。また、連邦政府の職員や契約者にマスク着用と社会的距離の確保を義務付け、その他の者が連邦所有の建物や所有地に立ち入る場合も同様の義務を課す大統領令に署名した。国際面では、ドナルド・トランプ前大統領が進めた世界保健機関(WHO)からの脱退手続きを停止する。
経済対策では、新型コロナウイルスの影響で家賃支払いや連邦提供ローンの返済ができない者に対する住居からの強制退去や抵当差し押さえの猶予を少なくとも3月末まで延長させるよう関連省庁に指示した。バイデン大統領は就任に先立ち、議会に1兆9,000億ドル規模の新型コロナウイルス対策法案成立を呼び掛けている(2021年1月18日記事参照)。
気候変動に関しては、トランプ前政権で脱退したパリ協定への復帰にかかる文書に署名した。また、トランプ前政権が施行した環境関連の規則見直しや、温室効果ガスの排出基準改定などを関連省庁に指示する大統領令に署名した。見直し予定の規則は100を超え、さらには、米国・カナダ間の原油輸送のために計画されてきたキーストーンXLパイプラインに関して、トランプ前大統領による建設許可(2019年4月10日記事参照)を取り消すとしている。
移民制度に関しては、有効な滞在許可を持たない移民に対して、合計8年間に及ぶ所定のプロセスを経た場合に市民権を与える内容を含む包括的な改革案として「2021年米国市民権法案」を議会に送付した。トランプ前大統領の象徴的な政策だった米・メキシコ国境での壁建設については、建設を即時停止させる大統領布告に署名した。優先課題に挙げる人種的公平性についても、連邦政府の政策で人種間の平等を確保する大統領令などに署名した。
2020年11月の議会選挙を経て、行政府に加えて上下両院とも民主党が多数党となったもののいずれも僅差であるため、バイデン政権は大統領権限で実施できる政策に焦点を当てるとの見方もある。閣僚候補はいずれも上院での承認を得ておらず、各分野の政策が具体化するには一定の時間が必要とみられるが、大統領就任と同時にこれほど多くの大統領令などに署名した例は近年になく、新型コロナウイルスや気候変動対策、移民など政権初期の力点が浮き彫りになったといえる。
(磯部真一)
(米国)
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