バイデン次期米大統領、1兆9,000億ドルの追加経済対策の可決を議会に要請
(米国)
ニューヨーク発
2021年01月18日
米国のジョー・バイデン次期大統領は1月14日、新型コロナウイルス対応と経済再建に関して1兆9,000億ドルの経済対策案を記者会見で発表し、米議会に早期の法案可決を呼び掛けた。バイデン氏は「米国救済計画(American Rescue Plan)」と名付けた今回の案に、ワクチン普及費用や個人向け現金給付の増額、失業保険の拡充・延長、州・自治体への支援金などを含めた(添付資料参照)。上下両院とも民主党と共和党の勢力が拮抗(きっこう)する中、バイデン氏の提案どおりに法案が成立するかは不透明な状況だ。
バイデン氏は、新型コロナウイルスによる国内の死者数が40万人に近づいている現状を受け「われわれは数世代に一度の公衆衛生上の危機と経済的危機の真っただ中にいる」とし、「待っている時間はない。今、行動しなければならない。エコノミストもそう指摘している」と、議会に対して早期の法案成立を呼び掛けた。トランプ政権と議会は2020年末に、追加の新型コロナウイルス対策法を成立させたが(2021年1月4日記事参照)、12月には非農業部門雇用者数が前月比14万人減と8カ月ぶりに減少に転じるなどして(2021年1月12日記事参照)、エコノミストらからさらなる景気刺激策が求められていた。
バイデン氏は、新型コロナウイルスの感染抑制が最重要とし、政権発足100日目までに1億人分のワクチン接種を完了し、中学校までの学校の大部分を安全に再開させることを目標に掲げた。また、感染者が自己隔離しながら給与を受け取れるようにするとし、これらの予算として4,000億ドルが必要とした。さらに、2020年末成立の法律で1人当たり600ドルとされた個人向け現金給付を、1,400ドル上乗せし合計2,000ドルとする案や、失業保険の追加給付を現行の1週間当たり300ドルから400ドルに拡充し、期限も3月から9月まで延長する案を盛り込んだ。そのほか、家計向けの税額控除や連邦最低賃金の時給15ドルへの引き上げ(現行は7.25ドル)なども含めており、個人・家計向けの支援が約1兆ドルと、主要な部分を占める。
オバマおよびトランプ両政権の大統領経済諮問会議(CEA)に所属していたミネソタ大学の労働経済学者のアーロン・ソジャーナー氏は「経済が必要としているのはワクチン普及の成功と、社会・経済活動におけるリスクの抑制だ」として、バイデン氏の計画を好意的にみる(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版1月15日)。一方、議会での法案成立の見通しについて、大手会計事務所グラントソントンのチーフエコノミストのダイアン・スウォンク氏は「上院での(民主党の)過半数が僅差な点を考える必要がある」とし、バイデン氏の計画が「野心的なもの」になる可能性を指摘する(ブルームバーグ1月14日)。実際に、上下両院で予算や税制を所管する各委員会の民主党トップ議員はいずれも、バイデン氏を称賛する声明を出したが、下院歳入委員会で共和党トップのケビン・ブレイディ議員(テキサス州)は「ビジネスを救済し、人々を仕事に戻し、経済を強くする上で、何の役にも立たない案を持ち出してきた」と批判しており、早くも党派対立の兆しが出ている。
バイデン氏は2月には、経済対策の第2弾として「より良く再建するための回復計画(Build Back Better Recovery Plan)」と名付けた、インフラや製造業、イノベーション分野などへの投資計画を発表するとしている。
(磯部真一)
(米国)
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