トランプ大統領、キーストーンXLパイプライン建設を再度承認
(米国)
シカゴ発
2019年04月10日
トランプ米国大統領は3月29日、カナダのアルバータ州と米国のネブラスカ州を結ぶキーストーンXLパイプラインの建設計画をあらためて承認する大統領令(Presidential Permit)に署名した。トランプ政権が2017年3月に同パイプライン計画に承認を与えた際の手続きが不適切だったとして、モンタナ地区連邦地方裁判所が2018年11月8日に建設差し止めを命じた判決への対抗措置ともみられる。
同判決は、オバマ前政権が2015年11月に同パイプラインの建設申請を却下した根拠の1つである環境影響評価に関して、米国務省が適切な見直しを怠った上で同建設計画を承認したとして、同パイプラインの建設差し止め、ならびに最新の情報に基づいた環境影響評価の実施を国務省に求めていた。なお、判決を下したブライアン・モリス裁判官はオバマ前大統領時代に任命されている。
米国国境をまたぐ国際プロジェクトの承認権限は国務省に移譲されており、2017年3月23日に同建設計画を承認したトランプ大統領の覚書も、トーマス・シャノン国務次官により署名されている。一方、今回の大統領令では、2017年3月23日の国務省による建設承認を撤回した上で、トランプ大統領自らがパイプライン建設計画を再度承認している。米国では大統領権限の行使に対する行政訴訟権は限られており(注)、同地裁判決で求められた追加の環境影響評価などを回避する意図を含んでいるとみられる。
キーストーンXLパイプライン建設は、アルバータ州南部から直径約90センチ、総延長約1,900キロのパイプラインを敷設し、ネブラスカ州で既存のキーストーン・パイプラインにつなぐ大規模プロジェクト。完成すれば、アルバータ州でオイルサンドなどから生産される重質原油を、米国の石油精製能力の5割以上が集中するメキシコ湾岸地域の製油所群まで輸送する能力が大幅に増強される。
同パイプラインの建設に関しては、2017年11月に行われたネブラスカ州当局による同州内での建設計画の承認に関しても、同州の最高裁判所でその適法性が争われており、事業者であるトランスカナダによる最終投資決定は先送りされている。
(注)米国の行政手続法(Administrative Procedure Act)で規定されている行政執行に対する訴訟対象には、大統領は含まれないという最高裁判例がある。
(上村真)
(米国)
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