欧州委の新デジタル規制法案、産業界からは歓迎と警戒の声
(EU)
ブリュッセル発
2020年12月22日
欧州委員会が12月15日に発表した「デジタルサービス法案(DSA)」(2020年12月22日記事参照)および「デジタル市場法案(DMA)」(2020年12月22日記事参照)について、欧州産業連盟(ビジネスヨーロッパ)は同日にツィッターで、「両法案により、デジタル時代に適合した欧州になる」として、産業界は、安全で、競争力があるデジタル単一市場を支援するとした。
また、欧州商工会議所(ユーロチェンバース)も同日に発表した声明において、DSAについて、「バランスが取れたアプローチ」と評価した。その上で、商取引やサービスを提供する上での条件について、EU域内の他の加盟国のルールを調査し、適合させる手段を持たない中小企業にとって、事業者が所在する国のルールを適用する母国法主義(注、the country of origin principle)が非常に重要だ、と指摘。今後、両案を討議する欧州議会、理事会に対して、母国法主義についても承認するよう求めた。
ICT業界は歓迎しながらも、規制強化を警戒
欧州の情報通信技術(ICT)関連産業団体のデジタルヨーロッパも12月15日に声明を発表。オンライン上の違法コンテンツについて、プラットフォーマーの責任を明確化したことや、既存の「eコマース指令」の中核部分が維持されたことを歓迎した。一方で、インターネットの規制においては、表現の自由やプライバシーの保護といった基本的権利の尊重と、違法、悪意のある行為の抑止の間でバランスを取る必要がある、と指摘。法案について詳細をみる必要があるとし、DSAによる規制が、実行可能な関係者間の協力メカニズムとなることを期待するとした。
また、DMAについては、デジタル市場における自由で公正な競争、EUの消費者、企業が単一市場の恩恵を享受することを目指す、欧州委の姿勢を支持するとした。しかし、デジタル市場に対して適法であるか懸念はあるものの、EUは既存の競争法に基づく手段を最大限活用すべきだと主張し、イノベーションや企業の市場参入を妨げかねない、新たな仕組みの導入には警戒を示した。あらゆる規制は、十分な根拠に基づき、個々のビジネスモデルの特性や市場条件が考慮されたものであるべきだとして、規制の仕組みづくりについて、今後、政策立案者と協力したい、とした。
(注)母国の法令などによって許可されている場合には、ほかの加盟国の許可を得ることなく、その国の法令に基づきサービスを提供し得るという原則。
(滝澤祥子)
(EU)
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