欧州委、違法コンテンツ対策などを求めるデジタルサービス法案を発表
(EU)
ブリュッセル発
2020年12月22日
欧州委員会は12月15日、デジタルサービス全般を対象とした新たな規制枠組みとなるデジタルサービス法案(DSA)とデジタル市場法案(DMA)(2020年12月22日記事参照)を発表した。DSAは、約20年前に制定された「eコマース指令」を改正し、利用者と商品やサービスをオンライン上で仲介する事業者の包括的な義務を、EU域内共通で時代に即したかたちにするものだ。利用者の権利を保護しつつ、米国IT大手が圧倒するデジタル市場において、中小企業などによる技術革新や規模の拡大がしやすい環境を整備し、EUの競争力強化を図る狙いがある。
DSAでは、EU域内で仲介サービスを提供する全事業者が規制対象となるものの、規制が特に強化されるのはEUの全人口の10%に相当する月間平均4,500万人以上の利用者を有する「非常に大規模なオンライン・プラットフォーム」事業者だ。
こうした事業者には、違法なコンテンツの流通、選挙や公衆衛生などに関する意図的な操作などに対するリスク評価を実施し、それに応じたコンテンツの修正や広告表示の制限など、合理的な範囲での効果的なリスク緩和措置を講じることが求められる。ただし、プラットフォームの利用者がプラットフォーム上で提供する違法なコンテンツに関しては、その存在を認知した段階で削除するなどの適切な対応を取る限り、プラットフォーム事業者の責任は引き続き免除される。また、議論となっていた「違法」なコンテンツの定義は、他のEU法や加盟国法に基づくとし、「有害だが合法」なコンテンツに関する直接的な規定もしていない。
また、ターゲティング広告など、利用者の検索結果などに応じて特定の情報を提案する手法を用いる場合には、利用するデータ要素を利用者に開示し、利用されないようにする選択肢を含め、利用されるデータ要素を利用者がいつでも修正できる機能の設置が必要となる。さらに、広告全般においても、広告である旨や、広告主、表示期間、利用するデータ要素を開示することが求められる。ただし、透明性要件は課されるものの、ターゲティング広告自体への規制は提案されていない。
DSAの実施に当たっては、各加盟国が、幅広い調査の実施と制裁金を科す権限を持つ「デジタルサービス調整官」を任命し、「非常に大規模なオンライン・プラットフォーム」事業者に関しては、欧州委も直接調査を実施し、義務不履行の場合には前年度総売上高の6%を上限に制裁金を科すことができる。
今後のEU理事会(閣僚理事会)と欧州議会での審議において、規制の在り方をめぐり議論を呼びそうだ。
(吉沼啓介)
(EU)
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