英国とEUが通商・協力協定に合意、全品目で関税・割当ゼロを維持

(英国、EU)

ロンドン発

2020年12月25日

英国政府と欧州委員会は12月24日、英国のEU離脱(ブレグジット)に伴う移行期間が終了する2021年1月1日以降の両者間の将来関係を定めた、通商・協力協定に合意した。3月2日の交渉開始から10カ月弱、移行期間終了まで7日を残して合意に達した。交渉は繰り返し期限を延期して難航を極めたが、通商に加え、交通、漁業、司法協力など広範な分野を対象とした協定を1年以内にまとめるスピード合意となった。

物品・サービス貿易、最後まで争点となった公正な競争条件(レベルプレイングフィールド:LPF)、漁業などの主な合意内容は、添付資料表のとおり。物品貿易では、2019年の英EU将来関係に関する政治宣言で示した「全品目で関税ゼロ、割当なし」を確定。原産地規則では、電気自動車などで双方の産業界の要求を反映させた弾力的な取り決めを盛り込んだ。英国が希望していた、日本など第三国を含む原産性の累積は実現せず、英EU間での原材料・生産工程を含む完全累積が採用された(ジェトロ解説資料参照PDFファイル(0B))。通関手続きなどの円滑化のため、輸出入申告データの共有可能性を模索することなどもうたわれている。

サービス貿易では、内外無差別原則などに加え、短期商用旅行による訪問の滞在期間の規定などは、日EU経済連携協定(EPA)の規定を踏襲した。また、法務サービスでは、EUの既存の通商協定(FTA)を上回る措置が盛り込まれた。デジタル分野でも、日英EPAで採用した、企業に対するソースコード開示要求の禁止など、先進的な規定が盛り込まれた。

EUから英国へのデータ移転も暫定的に継続可

争点のLPFでは、英国規制のEU規制への自動的連動やEU司法裁判所の管轄権を回避。政府補助金について、協定に大まかな原則を盛り込み、独立した監督機関を設置。不当な補助金の回収命令を発する権限を双方の裁判所に付与する。労働・環境基準などは現行水準を引き下げないことを確約し、専門家パネルが紛争解決に当たる。

最後まで難航した漁業(2020年12月18日記事参照)では、英国水域でのEU割当の25%相当(金額ベース)を、段階的に英国割当に付加する。経過措置として、相互の水域アクセスを5年半維持する。割当や水域アクセスの取り決めは、毎年の交渉で設定する。

このほか、英国がEUの研究開発支援プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」などに継続参加することが示された。また、企業の懸念が大きかった、EUから英国への個人データの移転については、EUが英国に対する十分性認定を確定するまで、最長6カ月間にわたり継続可能となることが決まった。

英国政府は、クリスマス・新年の休会期間に入っている議会を12月30日に招集し、2020年内に承認、批准手続きを完了させる予定。EU側でも、EU理事会での採択を行い、2021年1月1日からの暫定発効に間に合わせる考えだ(2020年12月25日記事参照)。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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