英国とEU、漁業めぐりなお深い溝、将来関係交渉は最終局面へ

(英国、EU)

ロンドン発

2020年12月18日

英国のボリス・ジョンソン首相と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は12月17日夜、大詰めを迎えた英国とEUの将来関係交渉について電話で協議した。首相は協議後の声明で、交渉は「深刻な状況」にあると強調。英国のEU離脱に伴う移行期間が終わる12月31日まで残された時間は極めて少なく、EUの姿勢が相応に変化しない限り合意に至らない可能性が非常に高いとし、強い懸念を示すとともに、EUに譲歩を迫った。

争点の1つの「公正な競争条件(レベルプレイングフィールド:LPF)」について、ジョンソン首相は「EUの合理的な要求を受け入れようと、あらゆる努力をしてきた」と述べ、英国がEUに対して相応に譲歩したことを示唆。しかし「隔たりは狭まったが、幾つかの根本的な部分は(一致するのが)難しいままだ」と続け、LPFでもなお合意に至っていないことを明らかにした。

「漁業」については、ジョンソン首相は「長期にわたって自国の水域を管理できず、自国の漁業を大幅に不利な立場に置くような漁獲割り当てを伴う、およそ主権国家にあり得ない状況に英国を置くことは受け入れられない」と明言。「EUの立場は一言で理不尽であり、合意のためには抜本的に改める必要がある」と続け、足下ではLPF以上に合意の障壁となっていることを示唆した。フォン・デア・ライエン委員長も協議後の短い声明で「特に漁業問題で解消すべき大きな相違が残っている」とコメント。16日の欧州議会での演説では「自国の水域に対する英国の主権に疑問を投げかけるつもりはなく、EUの漁業者の予見可能性と安定性を求めているのだ」と述べ、さらに「率直に言って、私たちはこの問題を解決できないのではないかとすら思う」と続けるなど、長期にわたる英国水域へのアクセスと漁獲割り当ての担保に向け、譲歩しない姿勢を示している。

欧州議会、12月20日までの合意を承認の条件に設定

双方とも、残る障壁としてLPFと漁業の2分野を挙げており、紛争解決などの「ガバナンス」では、おおむね合意に達しているとみられる。英国議会は12月17日夕、クリスマスと新年の休会に入ったが、交渉がまとまれば、休会中にも召集され、協定の承認と立法のための採決が行われる見込みだ。一方、欧州議会の議長・会派長会議は17日の声明で、20日深夜までに合意が実現していることを、年内に臨時本会議を開催して協定の審議と採決を行うための条件とすることを発表。それまでに合意が実現するか、予断を許さない。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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