EU理事会、欧州気候法に部分合意

(EU)

ブリュッセル発

2020年10月27日

EU環境担当相理事会は10月23日、2050年の気候中立(温室効果ガス排出実質ゼロ)目標を含む規則案「欧州気候法」の「部分的な一般アプローチ(Partial general approach)」に合意した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(以下、部分合意)。欧州委員会が9月17日に提出した修正案(2020年9月18日記事参照)に基づいて審議されたもので、一部未決事項が空欄になっている。注目される2030年の排出削減目標の設定は空欄となり、12月10~11日に予定される欧州理事会(EU首脳会議)に持ち越された。

2040年の中間目標の設定も先送り

今回の部分合意によれば、2050年の気候中立目標は「EU全体(Union-wide)」で達成される。欧州議会が10月7日に採択した案(2020年10月9日記事参照)では、全加盟国に気候中立の達成を求めていたが、10月15~16日の欧州理事会での合意に基づき、EU全体での達成を目指すことが確認された。また欧州議会の案では、2050年以降の正味の温室効果ガス排出量マイナスの達成を求めていたが、部分合意には含まれなかった。

2030年の温室効果ガス削減目標は、欧州委が提案する「少なくとも55%削減」に加盟国から一定の支持が得られている(2020年10月19日記事参照)が、審議は見送られた。また、9月の欧州委提案では、2050年の気候中立達成に向けて欧州委に、2040年の中間目標とその実現のための工程を設定する委任法令を採択する権限を付与するとしていたが、部分合意ではこの点は削除された。代わりに、パリ協定に基づき(注)、2023年に予定される同協定の第1回の世界規模の進捗評価(global stocktake)の後、遅くとも6カ月以内に、欧州委が2040年の中間目標を含む欧州気候法の修正案を提案することで合意した。

欧州気候法の早期成立には、欧州理事会において2030年排出削減目標の政治合意による打開が必要となる。さらに、正式採択には、欧州議会の過半数での承認が必要で、今後欧州議会、EU理事会、欧州委の3者間での非公式交渉「トリオローグ(3者対話)」を通じた調整が図られる見込みだ。

(注)第21回気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)において採択されたパリ協定(第14条)。

(安田啓)

(EU)

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