アゼベド事務局長が退任、WTOは11月までトップ不在に

(世界)

国際経済課

2020年08月31日

WTOのアゼベド事務局長が8月末をもって退任し、事務局長ポストが空席となった。事務局長の不在は、GATT時代も含めて初となる。アゼベド氏本人は9月以降、米国ペプシコの副社長兼最高企業行動責任者として着任する。

新局長が決まるまでの間は、4人いる事務次長[アラン・ウルフ(米国)、易小準(中国)、カール・ブラウナー(ドイツ)、フレデリック・アガ(ナイジェリア)]のいずれか1人が臨時で代行を務めるはずだった。しかし、ウルフ氏を代行に推した米国に、中国やEUが反対するなど、加盟国間での調整が難航し、7月末の一般理事会で代行を任命しないことが決定した。通常であれば、事務次長も、事務局長退任とともに交代するが、今回は新局長が決定するまで、4人の任期は延長される。事務局長ポストの空席期間中は、4人の次長と加盟国とで連携しながら、WTOを運営することとなる。

アゼベド氏が5月に自身の退任を表明した後(2020年5月15日記事参照)、次期事務局長の選定に向けて急きょ手続きが開始された。7月上旬の募集締め切りまでに8人が立候補したものの(2020年7月9日記事参照)、全般として通常の選考プロセスよりもスケジュールが相当タイトなことから、8月末までに新局長を選出するのは困難、との見方が当初から多かった。このため、一般理事会のウォーカー議長は7月末に、候補者による広報活動の期限を、アゼベド氏の退任後の9月上旬、事務局長選定の時期を11月上旬に、それぞれ延期すると発表した(図参照)。これを受け、各候補は、7月15日の一般理事会を皮切りに、各種インタビューや自作動画、チラシ、SNSなどを通じ、加盟国に自身を売り込む広報活動を行っている。9月7日の締め切り以降は、トロイカ体制と呼ばれる3人の選考委員の調整の下、加盟国代表団による3度の非公開協議を行い、最終的に加盟国の全会一致で新事務局長が決定される。

図 WTO事務局長選のプロセス

(吾郷伊都子)

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