アゼベドWTO事務局長が8月末に退任、任期満了前の退任は初

(世界)

国際経済課

2020年05月15日

アゼベドWTO事務局長は5月14日、2020年8月末で退任することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。事務局長は2013年9月に着任(2013年5月10日記事参照)し、現在2期目の後半に差し掛かっていた。任期は2021年8月までであるが、これを1年早める。任期満了を待たずに退任するのは、WTOでは初の事例だ。

退任の理由としてアゼベド事務局長は、14日に行った加盟国とのテレビ会議において、家族とも相談した上での「個人的な決断」であると強調し、健康問題や別の政治的目的については明確に否定した。第12回閣僚会議(MC12)は当初2020年6月に開催される予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて延期が決定し、2021年半ばもしくは同年末に開催される見通しとなっている。他方で、アゼベド事務局長が任期を全うした場合、12月から始まる次期事務局長選と、MC12に向けた準備期間とが完全に重なる。自身が事務局長就任直後にMC9に取り掛からざるをえなかった経験からも、この重複を回避し会議への準備に注力することが、組織にとって最良であると判断した。

アゼベド氏は、WTO事務局長としては初めて中南米から選出されており、タイ出身のスパチャイ氏に次ぐ2番目の途上国出身者でもあった(添付資料表参照)。それ以前の事務局長はすべて先進国から選出されていた。

今後加盟国は、次期事務局長の選出プロセスに入る。ただし、WTOの事務局長選はこれまでの通常のケースでは、12月から翌年5月頃まで少なくとも約半年を要しており、選出にあたっては全加盟国の合意が必要である。このため9月1日までに新たな事務局長が選任されない可能性もある。その場合、4人のWTO事務局次長(ナイジェリアのフレデリック・アガ氏、ドイツのカール・ブラウナー氏、米国のアラン・ウルフ氏、中国のイー・シャオジュン氏)のいずれか1人が代理局長を当面務める可能性が報じられている。

(吾郷伊都子、朝倉啓介)

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