移行期間後に半年間の緩和措置、対EU輸入の通関申告を猶予
(英国、EU)
ロンドン発
2020年06月16日
英国政府は6月12日、EU離脱(ブレグジット)に基づく移行期間終了後の2021年1月1日から半年にわたり、EUからの輸入手続きを簡素化することを発表した。輸入通関申告手続きを最長6カ月間猶予し、関税の支払いも通関申告時まで繰り延べを認める。同年4月からは事前通知などの対象品目を広げ、7月にはEU域外からの輸入と同様の通関手続きを求める(添付資料表参照)。
英国はEU離脱が確定する前にも、合意なき離脱(ノー・ディール)になればEUからの輸入手続きを簡素にし、関税繰り延べも認める方針を示していた(2019年2月7日記事参照)。さらにノー・ディールの場合は、EU以外を含む全輸入について最長1年にわたり大半の品目を無関税にする方針も固めていた(2019年10月9日記事参照)。今回、関税率は移行期間後に新たなものに置き換えることを5月に公表したが(2020年5月20日記事参照)、通関手続きについては、2月にマイケル・ゴーブ・ランカスター公領相が移行期間後に激変緩和措置を導入する考えはないと明言していた(2020年2月12日記事参照)。
この方針の下、政府は英国企業に移行期間後の通関実務への対応を促すため、以前から政府サイトで通関・宅配業者の一覧を頻繁に更新しているほか、輸出入企業の従業員教育や通関代行業者のIT投資や採用を助成している。しかし、その後に新型コロナウイルス感染拡大による企業活動停滞などもあり、移行期間後すぐに国内企業が通関実務に対応するのは困難と判断。交渉中の英EU間の自由貿易協定(FTA)が締結されて無関税の貿易が継続できても、通関手続きは必須となるため、方針を転換して緩和措置導入に踏み切った。
国内では、英国商業会議所(BCC)や貨物輸送業協会(FTA)など経済・業界団体が相次いで今回発表された措置を歓迎する声明を発表。ただ、今回の措置は英国が独自に決定できる輸入時の通関手続きにとどまり、EUは同様の緩和措置を発表していない。離脱前も英国がノー・ディール時の緩和措置を打ち出した一方で、EUは英国以外の第三国と同じ手続きを英国に求め、例外扱いはしてこなかった。また、今回の措置は北アイルランドには適用されない。同地域での通関実務の詳細設計は、英EU間で移行期間終了までに確定させる必要があり、その進捗を懸念する声も少なくない。
(宮崎拓)
(英国、EU)
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