ノー・ディール時の暫定関税率を変更

(英国)

ロンドン発

2019年10月09日

英国政府は10月8日、EU離脱(ブレグジット)問題で3月13日に発表した合意なき離脱(ノー・ディール)となった場合の暫定関税率(2019年3月14日記事参照)の変更案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。前回の暫定関税率と比較し、重貨物車両(HGV)やバイオエタノール、衣類など、関税率の一部が変更となった。

今回の案では、HGVについて、英国の生産者とそうした車両を利用し陸運業を行う中小企業の間のバランスをより良くするためとして、22%の高関税が設定される品目の関税率を10%に引き下げた。これらの品目のEUの対外共通関税率は22%、日EU経済連携協定(EPA)上では現在19.3%〔発効8年目(2026年2月1日)に関税撤廃〕。現時点では、英国の暫定関税率が日EU・EPAにおける現行税率を下回ることになる。

バイオエタノールについては、燃料用の品目の関税引き下げなど一部品目の関税率を変更した。燃料の供給は国内の製造業の基幹となるもので、製造業を保護するためとしている。一方、衣類については課税品目を増やしており、他国と比べて特恵関税を受ける開発途上国が英国市場にアクセスしやすい状態を維持する(なお、衣類および衣類付属品の関税は日EU・EPA上では撤廃済み)。また、豚肉の一部関税が引き上げられたほか、車両用のホイールでも新たに品目コードが設けられ関税率が設定された。

暫定関税率はノー・ディールになった場合に、英国と貿易協定を締結した国と一般特恵関税制度(GSP)の適用国を除き、全ての国に適用される。適用期間は最大12カ月間で、政府は離脱日から、暫定関税制度の経済への影響を評価するプロセスを設け、必要に応じ暫定関税率を変更するとしている。

政府は、暫定関税は国内の製造業の競争力維持と関税による物価上昇の家計への影響との間でバランスをとる手法に基づき決定していると説明しており、英国の企業はEUとの合意ができない場合でも、大半の物品を関税なしで輸入できるとしている。また、EU以外にも関税がかからない品目が増えることで、例えば、ニュージーランドの蜂蜜にかかる17%の関税やブラジルのブドウにかかる15%の関税がかからず、消費者が全世界から安く良質な物品を得る機会となるとしている。政府は12カ月間の暫定関税率と合わせ、2020年1月からは永続的な関税措置のコンサルテーションに着手するとしており、企業や消費者などから意見を聴取する予定だ。

(木下裕之)

(英国)

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