ノー・ディールの場合の関税枠組みを発表

(英国)

ロンドン発

2019年03月14日

英国政府は3月13日、英国がなんらの合意なしにEUから離脱(ノー・ディール)する場合に適用される暫定的な関税枠組み外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。適用開始から最大12カ月間の暫定措置としており、その間に永続的な措置に関する意見公募と評価を行うという。

ノー・ディールの場合、EUとの輸出入に移行期間なく直ちに関税が課されることになり、国内産業への打撃や消費者物価の上昇が懸念されていた。政府は、新しい関税枠組みは打撃を受けやすい産業と消費者物価の抑制の間の合理的な妥協点としている。枠組みはEUだけでなく全世界に対して適用される。政府によると、英国への輸入のうち金額ベースで87%が無関税となる。下記の分野を含む残りの13%には新たに設定される関税が課される。

  1. 牛肉、ラム、豚肉、家禽(かきん)や酪農品などには、農業保護の観点から関税と関税割り当てを適用。
  2. 自動車産業保護ならびに困難な市場環境を考慮して、完成車に対する多くの関税を維持。ただし、自動車メーカーのEUとのサプライチェーンが阻害されるのを回避すべく、自動車部品には関税を課さない。
  3. 不当廉売や国家補助など不平等な貿易慣習に対する国内産業保護の観点から、陶磁器や肥料、燃料といった分野への関税を維持。
  4. 貧困削減への長期的な貢献の観点から、現在の一般特恵関税制度(GSP)を維持。また、開発途上国の英国市場へのアクセス維持のため、バナナや甘しょ糖、特定の魚介類に対してはGSPを維持。

政府は新たな関税や関税割り当て、特恵関税をウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公表している。適用される税率は、例えば乗用車では10%と、EUと同水準となっている。一方で、牛肉など農産品ではEUと異なる水準を設定している物品も見られる。

また、イスラエルや南東部アフリカ地域(ESA)、スイス、フェロー諸島、チリ、パレスチナといった、英国との自由貿易協定(FTA)が発効した国・地域や、GSP対象となる約70カ国の開発途上国に対しては特恵関税が適用される。

(木下裕之)

(英国)

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