英国政府、新たな輸入簡易手続きを導入

(英国)

ロンドン発

2019年02月07日

英国政府は2月4日、EUと貿易をしている国内の14万5,000社に対して、英国がEUから何ら合意なく離脱するノー・ディールとなった場合に導入する、輸入簡素化手続きについて通知した。

新たに導入される「移行簡易手続き(TSP)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」では、EUからの物品を簡易な通関手続きで輸入し、関税の支払いを繰り延べすることが可能となる。この手続きの対象は、英国で設立され、EUの事業者登録・識別(EORI)番号を持ち、EUから、またはEUを経由して英国に輸入をする企業。通常、第三国からの輸入では、必要書類に加え、通関申告書「C88フォーム」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを税関に提出しなければならない。輸入規制の対象となっていない物品を、TSPによりEUから英国に輸入する場合、輸入者は英国への到着日時、物品の分類・数量、インボイス番号、課税価額などの商業書類上の情報で、「C88フォーム」なしで通関申告をすることができる。物品が英国に到着した翌月の第4営業日までに、補足申告(SD)を提出すると、同月15日に輸入関税がダイレクトデビット方式で決済されて、輸入手続きが完了する。TSPへのオンライン登録は2月7日に開始する。

英国商工会議所(BCC)は2月4日、産業界の優先事項は無秩序なブレグジット(英国のEU離脱)を回避することとしながら、政府が輸入簡素化手続きを導入したことは安心材料になる、との見解を示した。

政府は企業に対して、ノー・ディールへの広範な分野の対応を記載したパートナーシップ・パック外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2018年10月31日記事参照)や、税関手続きへの対応準備のための補助金外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの活用を呼び掛けている。補助金は、税関手続きの社員訓練やITシステムの導入を行う企業向けに800万ポンド(約11億3,600万円、1ポンド=約142円)が準備され、応募期間は2019年4月5日、もしくは補助金がなくなるまで、となっている。英国倉庫協会(UKWA)が倉庫業者を対象に2018年12月に実施した調査によると、調査対象企業の75%は既に倉庫が満杯と回答、ノー・ディールに備えて英国企業が在庫の積み増しをしている状況がうかがえる。

(木下裕之)

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