ブレグジット後の通関手続きへの準備解説書を公表
(英国)
ロンドン発
2018年10月31日
政府は10月22日、英国がEUからなんら合意なく離脱する(ノー・ディール)場合の企業による通関手続きなどへの準備を支援するガイダンス「パートナーシップ・パック」を公表した。より詳細なガイダンスは2018年秋の終わりに公表予定だが、今回は貿易業者や通関業者、運送業者、EUへサービスを提供する事業者など事業形態ごとの解説となっている。
本ガイダンスは、ノー・ディールで英国がEUを離脱する2019年3月29日午後11時(英国時間、以下、離脱日)以降、貿易に関する手順や法令の変更、貿易関連事業者に必要とされる手続きなどについて説明するもの。ノー・ディール時には、EUとの輸出入ではEU域外の国(第三国)と同様の関税率が適用され、輸入申告書や輸出申告書が必要となる。英国への輸入時の関税率は、現在EUで適用されているEU共通関税率(CCT)と異なる可能性があり、EUへの輸出はCCTが適用される予定だ。
ノー・ディール時に企業が注意すべき点として、(1)EUとの貿易ではWTO協定税率(MFN税率)と非特恵原産地規則が適用される、(2)EUは2019年3月までに英国からの輸入に対しMFN税率を変更する可能性もある、(3)英国は途上国からの輸入には一般特恵税率を継続し、EUの自由貿易協定からの離脱後も継続性を保つ、(4)現在の商品分類コードを直ちに変更する予定はない、などを挙げた。
付加価値税(VAT)については、可能な限り現行の制度を維持するとするものの、EU加盟国との決済については変更が生じる可能性があるとした。政府は、ノー・ディール時に、輸入VATに関して英国VAT登録事業者は、取引先から支払われたVATから自身が支払ったVATを差し引いた額のみを当局に支払う制度(postponed accounting)の導入を発表している。
また、輸出および輸入に関して、ノー・ディール時の手順を踏んだ準備ガイダンスも公表した。しかし、これらは全てのシナリオに備えた政府の準備の一環として作成したもので、現時点ではガイダンスに沿った手続きは不要、しかるべき時期に政府が準備の実行について通知する、と注意を促している。
(鵜澤聡)
(英国)
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