米USTR、英国との2国間貿易交渉の開始を発表
(米国、英国)
ニューヨーク発
2020年05月08日
ロバート・ライトハイザー米国通商代表部(USTR)代表は5月5日、英国と2国間自由貿易協定(FTA)の交渉開始を発表した。米国側はダン・マラニーUSTR代表補が率いる。1回目の交渉は5月6~15日に約30の分科会で進める。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、交渉はインターネットを通じて行う。
ライトハイザー代表は交渉開始に当たって、「英国との間で野心的かつ高水準の貿易協定を交渉し、われわれの経済を強化し、雇用を支え、両国間の貿易・投資の機会を改善していく」とし、議会が設定した交渉目的に沿って進めていく点を強調した。また、新型コロナウイルスの影響から立ち直る上でFTAが非常に重要であり、長期にわたって健全な経済に貢献するとの点で両国が合意しているとした。
USTRは今回の交渉を「2015年大統領貿易促進権限(TPA)法」(注)に基づき進めていく。既に米議会に対しては交渉開始の意思を通知しており(2018年10月17日記事参照)、英国との交渉目的も公表している(2019年3月5日記事参照)。2月末に公表した2020年の通商政策課題でも、英国との貿易交渉を優先的に取り組むべき課題としていた(2020年3月6日記事参照)。
米英両国は、包括的な貿易協定は既に強固な両国間の貿易・投資関係を強化し、相互の市場アクセスの拡大を通じて、両国の家庭、労働者、企業、農家に新たな機会を与えるとしている。USTRによると、米英のGDPはそれぞれ世界1位と5位であり、双方向の年間貿易額は2,690億ドルに上る。また、相互に最大の直接投資国となっており、双方向の投資残高は1兆ドルとなる。両国は、今回の貿易協定は健康と安全、環境保護の高い基準を維持し、世界にとってモデルとなるFTAになることを目指すとしている。
米英の交渉開始について、全米50州の農務長官などが参画する州農業省全国協会(NASDA)はライトハイザーUSTR代表の発表同日、「新型コロナウイルスにより農業生産者の先行きが不透明な中、交渉開始は歓迎すべき動きだ。大西洋の両側の生産者の利益のために、科学に基づいた協定構築を期待する」との声明を出している。米インターネット協会も同日のプレスリリースで、「米英はデジタル技術の世界を主導しており、今回の協定には、情報の自由な流通、仲介者(インターネット・サービス・プロバイダー)の損害賠償責任における保護、差別的なデジタル課税の禁止、中小企業がグローバルに競うためのインターネット活用などの政策が含まれるべき」と期待を示している。
(注)米国憲法では、外国との通商関係は議会が管轄している。TPA法は、この通商交渉に関する権限を大統領に一時的に付与するもの。TPAが大統領に与えられている場合、議会に対する報告・相談義務など、TPA法に定められた目的や手続きにのっとって政権がまとめた通商協定法案は、議会で修正を受けずに賛否のみの採決に付すことができる。
(磯部真一)
(米国、英国)
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