英国が対EU交渉方針公表、包括的FTA追求するもEU規制連動は否定
(英国、EU)
ロンドン発
2020年02月05日
1月31日のEU離脱(ブレグジット)から最初の週末が明けた2月3日、英国政府は2020年末までの移行期間中に取り組むEUとの将来関係に関する交渉の方針を示した声明文を公表、議会に提示した。自由貿易協定(FTA)では、前年に合意した政治宣言(2019年10月18日記事参照)に沿うかたちで関税や数量割り当てを導入しないことを目指す一方、政府補助金や環境・労働規制、税制などに関する「公正な競争条件(レベルプレイングフィールド:LPF)」については、一般的なFTA以上に規制を連動させることは認めないとの考えを明示した(添付資料表参照)。
LPFは、EU側が英国とのFTA交渉で最も重視するもの(2020年1月9日記事参照)。同じく2月3日に欧州委員会がEU理事会に提出した交渉権限(マンデート)指令案(2020年2月4日記事参照)でも、関税・数量割り当てゼロのFTAは、これらLPFの徹底した履行義務が条件と明言している。
ボリス・ジョンソン首相は同日午前、交渉目的公表に先立ち、ロンドン南東部のグリニッジで、英EUの将来関係について演説。補助金や環境・労働規制などLPFに関する多くの分野で英国がEUより進んでいる事例を多数列挙し、「英国は条約による強制などなくても、これら(LPF)の分野において多くの点でEUよりも良い、最高の水準を維持する」と述べ、EU規制への連動を否定。「EUが一挙手一投足を英国に合わせなければ、われわれはEUとの関税・割り当てゼロの合意を拒むだろうか」と述べ、FTAにLPFを絡めるEUの姿勢に疑問を呈した。
さらに、ジョンソン首相は演説の中で、アダム・スミスやデービッド・リカードら英国が生んだ著名な経済学者の名前に言及するなどして、離脱後の英国が自由貿易を推進する旗手となる意向を強調。米中貿易摩擦なども引き合いに「ブリュッセルから中国、ワシントンに至るまで、外交政策の議論・交渉で、関税がこん棒のように振りかざされている」と述べ、保護主義的な動きに苦言を呈し、EU規制に従わなければゼロ関税もないとするEUの姿勢を牽制した。
この演説について、国内経済界では英国産業連盟(CBI)のジョン・アラン会長が同日に声明を発表。自由貿易や高度な規制水準維持に対する首相の明快な確約を評価しつつも、「必要最低限の合意では、(英国企業の)投資を減退させるだろう」とくぎを刺した。英国商工会議所(BCC)のアダム・マーシャル事務局長も声明で、「これらの交渉の結果は、英国全土の企業に極めて大きな影響を与える」とコメント。交渉過程で経済界の声に耳を傾けるよう求めている。
(宮崎拓)
(英国、EU)
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