英EU首脳が会談、ブレグジット後の通商交渉で互いを牽制

(英国、EU)

ロンドン発

2020年01月09日

英国のボリス・ジョンソン首相は1月8日、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と首相官邸で会談。英国のEU離脱(ブレグジット)や米国とイランの対立で緊張が高まる中東情勢について意見を交わした。ブレグジット後の通商交渉をめぐっては、立場の違いが鮮明になった。同委員長の訪英は2019年12月の就任後初めて。

ジョンソン首相は会談で、EU・カナダ包括的貿易投資協定を念頭に、物品やサービス、その他の分野での協力を規定した広範な自由貿易協定(FTA)をEUとの間で締結する意向を表明。1月31日のEU離脱後、可能な限り速やかに交渉を始める準備ができていると伝えた。また、離脱後の移行期間(2019年12月13日記事参照)を2020年末から延長する考えはないことを強調。移行期間後は英国によるEU規制への連動や英国に対する欧州司法裁判所の管轄権は終了し、英国が漁業水域や人の移動の管理を独自に行う考えも示した。

これに対して、フォン・デア・ライエン委員長は、EU規制からの分離とEU市場へのアクセスは両立されないとコメント。先に合意した政治宣言(2019年10月18日記事参照)の枠組みに基づき交渉を進めるものの、2020年末までに交渉・批准を終えるには時間が短いとの考えもあらためて示した。

委員長はまた、会談に先立ち、かつて留学したロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで講演(2020年1月9日記事参照)。その中でも、「人の移動の自由を打ち切るなら、資本や物品、サービスの移動の自由もない。環境、労働、税制、政府補助金(などの規制)に関する公正な競争条件が維持されなければ、世界最大の単一市場(であるEU)への最高水準のアクセスは実現しない」と述べ、EU規制からの分離とEU市場へのアクセスは両立させない考えを強調。離脱した英国がEU単一市場と関税同盟の一体性を損なうような「妥協はあり得ない」と明言した。

英国議会では1月7日、離脱協定法案の審議(2019年12月23日記事参照)がクリスマスと年末年始の休会を経て再開。8日夜までに野党提出の修正動議10件の採決が行われたが、先の総選挙で大勝した与党・保守党の前にいずれも大差で否決。この中には、EU規制との緊密な連動を追求するよう政府に義務付ける修正案も含まれていた。法案は9日にも下院を通過する見通し。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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